しかし、複数の研究チームがその評価基準を詳細に調べたところ、選んだESG評価機関によって、投資選択が全く異なったものになる可能性があることが判明した。
評価基準をめぐる混乱
ハーバード大学所属の研究者を含むチームは、「ESGデータについて誰も教えてくれない4つの事柄(Four Things No One Will Tell You About ESG Data)」と題された研究論文で、各企業がESG基準でどのように評価されているかを調査した。その結果は、あまり芳しいものではない。同じ企業であっても、評価を行う機関によって、ESGスコアが全く異なる場合もあることがわかったのだ。評価が異なる原因としては、データの欠落、比較対象の相違、あるいは、単純に解釈の違いなどが挙げられる。
複数の測定方法があるESG指標
例えば、従業員の健康や安全は、一般にESG投資家にとって重要な基準だと考えられている。だが、その開示や測定の方法は1つではない。一例を挙げるなら、命に関わる事故の件数と、労働時間20万時間あたりの負傷率、どちらを検証するのがより望ましいのだろうか?
従業員の健康や安全を評価する方法は数多く存在するが、測定の方法が違えば、たとえ同じ会社だとしても、下される評価は異なる可能性がある。さらに、異なる会社が異なる基準で判断されると、この問題はさらに複雑化する。
比較対象の問題
比較が行われる企業グループの属性も、評価を大きく左右する。例えば、ある鉱山会社は、同業種の他社と比べると優秀に見え、高いESG評価につながるように見える。だが、他業種を含む全企業で比較した場合は成績は悪く、こちらの比較ではESG評価は低くなると考えられる。ゆえに、どのグループ内で比較するかが重要になる。
同じ会社でも、違うグループの中で比較するとESGスコアが違ってくるかもしれない。測定方法と同様に、この問題に関しても、統一されたアプローチは存在しない。