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ドクター本荘の「垣根を越える力」

Thaspol Sangsee / shutterstock

いま日本では、企業の成長戦略としてデジタルトランスフォーメーション(DX)が注目を浴びています。

DXといえばやはりGAFAが先進ですが、日本の大企業の多くは、他の大企業を参考にしても、アマゾンやグーグルなどのベンチャーから急成長した企業については、「あれは別だ」と最初からベンチマークから外していることが少なくありません。個人ではアマゾンやグーグルにお世話になっているのに、まったく変な話です。

しかし、それではいまの「DX戦線」は戦えません。例えば、ネット販売(EC)を始めただけでDXだと思っている会社もありますが、すでに世の中には、ずっと以前からECに取り組み、さらに進化させている企業があることを忘れてはいけません。

市場ではこのような先進的なDXを進めるベンチャー系の企業と競うことになります。なので、DXに対する取り組み方を変えなければ、到底、良い成果は得られないでしょう。

アマゾンは全社員に7億ドルの教育投資


ある大企業では、満を持して、大手のシステム・インテグレーター(SIer)に大きな予算でECサイトを発注したと聞きました。しかし、ある大手の小売業でECを経験した経営コンサルタントは、「失敗の確率が高い」と断じています。SIerのような外部業者に「丸投げ」すると、後で何をするにも時間がかかるからです。

例えば、ECサイトのABテスト(改善のためのごく簡単な検証の1つ)も難しいと聞きます。年に1回のリニューアルと数回のマイナーチェンジをするSIerでは、お客様のニーズや要望に応えることは難しいでしょう。

こうしたことが起こる背景には、日本ならではの事情があります。IT人材を必要とするユーザー企業と、SIerのようにITサービスを提供する企業のIT人員数比率は、米国は前者が72%ですが、日本は25%と、ユーザー企業のIT人材は限られています(情報処理推進機構2011年報告書)。つまり、日本企業はITに関しては、かなり外部に頼っているということです。

したがって、DXとは言ってみても、外部任せで、ゆっくりしか進められない企業が多いのが実情です。ところが、世界のビジネスシーンでは、そうした日本の大企業の事情には合わせてはくれません。

「アマゾンは、2012年で1時間に1000回のリリースを公表しています。おそらく、いまは1時間に1万回とか10万回リリースしていると思われます」

国内外のDX調査を行っている日本CTO協会の代表理事の松岡剛志氏はこう指摘します。つまり、アマゾンは、ほとんどリアルタイムでデータを「収集・分析」し、超高速な仮説検証を行っているというのです。

また、アマゾンは、倉庫のワーカーまで含め、あらゆる職種の10万人の全社員のデジタル能力トレーニングに、6年間で7億ドル以上を教育投資すると、2019年に発表しました。

すでにアマゾンは世界有数のデジタル先進企業ですが、だからこそ継続的な投資と人のレベルアップが大切だと認識しているのでしょう。この点は、DX について考え始めたばかりの、特にいったんDX投資をしたらひと安心と勘違いしている日本の大企業の一部の経営陣とは、根本的に異なります。

文=本荘修二

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