ドアダッシュは昨年、ドライバーの最低基本給の一部として顧客のチップを使用していたことで、強い非難を浴びていた。この措置によって同社は、顧客がチップを払った場合にドライバーに支払う金額を抑えていた。
同社は世間の反発を受けて、最終的にはこの方針を変更したが、ワシントンのカール・ラシーン司法長官は昨年11月、ドアダッシュが顧客を誤解させ、市の消費者保護法に違反しているとして提訴していた。
和解の一環として、ドアダッシュは問題の制度が適用されていた時期に配達を行った労働者らに150万ドルを支払う。さらに、市に対して調査費用を75万ドル、2つの労働者の支援団体にそれぞれ12万5000ドルを支払うことになる。
同社はさらに、今後はすべてのチップが直接労働者に支払われるようにすることや、支払い体系を変更する場合は公表することにも同意した。
しかし、ドアダッシュは同社がいかなる不正行為も行っていないと主張し、「今回の合意は、当社が法令違反や不正行為を認めたと解釈されるべきではない」と述べた。
ドアダッシュは11月13日、年内にニューヨーク証券取引所に上場すると発表した。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、上場時の時価総額は250億ドル(約2兆6000億円)を超える見通しだ。同社の筆頭株主はソフトバンクグループ(SBG)傘下のビジョンファンドとされている。
批判を浴びる「ギグ・エコノミー企業」
ドアダッシュやその他のギグエコノミー系の企業らは長年、顧客が支払うチップの扱いをめぐり、世間の非難を浴びてきた。アマゾン・フレックスもまた、チップを用いてドライバーの給料を補助していると批判されている。
インスタカートの場合は、顧客が支払う「サービス料」を、配達員へのチップだと勘違いさせたとして、同様の訴訟を起こされている。
低賃金のギグ労働に関する問題は、これらにとどまらない。労働団体は、ウーバーやリフトなどが牽引するギグ・エコノミーが、アプリベースの労働者から公正な賃金や福利厚生を奪っていると批判してきた。しかし、11月3日にカリフォルニア州で実施された住民投票の結果、ウーバーやリフト、ドアダッシュらが提案した住民立法案「プロポジション22」が成立し、ドライバーや配達員を非正規社員のまま雇い続けることが可能になった。