シリコンバレーの最新潮流から読み解く「ニューノーマル時代=歴史の早まり」とは

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新型コロナウイルスの新規感染者が増加し続け、各州が再び行動制限を課すなど、一向に落ち着く気配のない米国。そんな米国の中心地のひとつシリコンバレーから、楽天の社長室に所属し、米国本社でRakuNestなどの新規事業を担当する山本航平氏に、同地におけるビジネスの最新潮流や、ニューノーマル時代の事業創造の極意について伺った。

BNPLという信用創造による「後払い」サービス


デジタル技術や、インターネットによる社会変革のスピードは特に米国で激しく、これはニューノーマル時代の潮流を読み解く鍵になる。例えば、マッキンゼーの分析によると、米国の小売全体におけるEC化率の伸びは、コロナの感染が始まった直後の3カ月で、直近10年の伸びと同じくらい急増したというデータがあり、それに伴った課題を解決するサービスにも注目が集まっている。

山本氏は、「ロックダウンの中で、より多くの人がオンラインでモノを買うようになったことは広く知られているが、米国でBNPL(Buy Now Pay Later)という「後払い」に特化した新しい決済トレンドが広がっている」と語る。

山本氏の写真
山本航平|Senior Manager, US Incubation Office / Group CEO office

同氏によれば、筆頭は元PayPal創業者であるMax Levichinが、2012年にサンフランシスコで創業したAffirm。通常の与信審査は1日以上かかるが、SNSの友人関係や、ウェブサイトの閲覧履歴、オンライン購買履歴などのソーシャルデータを活用してリアルタイムに与信を実施することが特徴だ。

「自分自身も渡米したばかりの頃に大変苦労した記憶があるが、米国ではクレジットスコアと呼ばれる信用スコアがあらゆる社会活動において必要になる。例えば大学を卒業したばかりの若者や、国外からの移民などのクレジットカードを持てない層、クレジットカードの上限金額を超えてしまった層に対して、“後払い”決済のニーズは非常に大きい」と山本氏。

決済画面の例
Affirmの決済画面の例

一方で、Affirmを導入する店舗側の視点では、高額商品でも分割払いに対応することで、よりオンラインでもモノが売れるようになったり、クレジットカードが使えない顧客に対しても決済手段を提供できるなどのメリットがある。また、従来のクレジットカードのリボ払いと比較して、金利負担を店舗側が負担することもできる(マーケティングコストと捉えられる)ことも大きな変化である。

北米で少なくとも600万人のユーザーに利用されていると言われるAffirmは、16億ドル以上を資金調達したユニコーン企業であり、今年10月に上場申請をした。また、スウェーデンを拠点とする競合スタートアップ、Klarnaは評価額が1兆円を超え、欧州最大のフィンテックのユニコーン企業となった。

山本氏は、「BNPLに限らず、このような“EC×決済”における新潮流は、今後も加速していくと思われる」と語る。
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文=森若 幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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