先が見えなくても諦めなかったのは、プロダクトの力を信じていたからだ。
「いまは社会課題をマーケットインで解決したいという起業家が多いですよね。でも、僕たちは完全にプロダクトアウト。とにかく誰もつくったことのないすごい製品で周りを驚かせたかった。苦しいなかでも諦めなかったのは、プロダクトという子どもを産んだから。子は鎹かすがいです」
周囲が追いついてきたのは17年ごろだ。もともとクラウドでBtoBサービスを提供していたが、SaaSという言葉の普及とともに認知が広がった。それが第一の波なら、第二の波が今年のノーコード。それまで「プログラミング不要」とアピールして刺さらなかった企業も、「ノーコード」と言い換えたら反応がよくなった。
「起業は忍耐力ゲーム。沖にこぎだしても、波がいつ来るかわからないし、来ないかもしれない。それでも自分が『未来』と信じたことをやり続けられるかどうか。賢い人ではなく、諦めなかった人が勝つ」
庵原がこぎ出す海は、日本だけではない。19年、総額30億円の資金調達でリードを取ったのは、外資系のEight RoadsVentures Japan。海外進出を視野に入れた株主構成だ。
「世界にはノーコードアプリの会社がいくつかありますが、僕たちが世界で一番早く上場する会社になるでしょう。競合の多くは、アプリ開発のスキルをもたない個人や中小企業向けのプロダクトが多い。一方、Yappliは大企業が抱えるような複雑な要件や仕様に対してもノーコードで対応できる。企業のモバイルDXという巨大な市場を、世界で真っ先に取りにいく」
誰もいない海にこぎ出すことに躊躇はない。あとはひたすら波を待つだけだ。
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