リスペクトとチームビルディング。仲間を感じる過酷なレースの強烈な魅力

誰も助けてくれない。信頼の仲間とひたすらに駆ける

忙しい仕事の合間に、「ランニングの時間」を積極的に設けて取り組む経営者は少なくない。なかには、トライアスロンに挑む人も。ゴールまでの長い道のりのなかで、モチベーションを維持し、体力を逆算しながら挑む様は経営のそれと似ている部分がある。では、「OMM」ではどうだろう。

イギリス発祥の世界最古といえる山岳耐久イベント「OMM JAPAN」が今年も開催された。ロゲイニングとマウンテニアリングが組み合わさったイベントだ。雪積もる11月の野沢温泉村という環境で、2人1組のチームが1泊分のテント泊の荷物を背負い、地図とコンパスを頼りにポイントを目指す。

この過酷なレースとビジネスは結びつくのか。OMM JAPANイベントディレクターであるノマディクスの小峯秀行の元を訪れた。

小峰秀行の写真
小峰秀行|ノマディクス取締役 OMMJAPANイベントディレクター

“ 当日は運営による安全面でのサポートは『基本的にほぼ無い』ということを予め強く認識して参加の準備をしてください ”

これはイベント前にSNSに掲載された注意喚起だ。

OMM参加者は同イベントがオウンリスクの精神に基づいて開催されていることを深く理解しないといけない。だからこそ、自身の山のスキルをテストできる絶好の場になる。1968年にイギリスで開催された約50年後に日本にも上陸。2015年に嬬恋で開催された際にはひどい雨でのキャンプとなり、濡れと冷えへのケアが最重要項目となった。2日間動き続けるために、ライフラインを確保しなければならない。

山道で汚れた足下

本家OMMのもとは草レース。主催がいなく、やりたい人が集まって始まったという。マンチェスターやスコットランド辺りでは、地図を持って5時間ほどロゲイニングするフェルレースという伝統的なレースがいまでも残っており、地図に訪れるポイントだけ決まっていて、ルートは自由という形式をとっている。そのフェルレースとマウンテニアリングを組み合わせたのがOMMだ。とはいえ、過酷だ。そんなイベントの背景を聞いた。

オウン・リスクだからこそ見出す考え方


──OMMとはどのようなレースですか?

イギリスは自分たちのスキルや限界に挑戦するという文化がある国で、リスクマネジメントが文化として根付いているんです。僕も本家OMMに参加したことがあるのですが、カルチャーショックでした(笑)。一度、スタートしたらなんのサポートもない。ケガをしようが救護所はないし、リタイアを希望しようが回収もない(マラソン大会ではバスで回収)。リタイアするなら、自分たちの力でどうにかできるタイミングで判断しないといけないのです。

すべて自己責任。そんなことも知らずに進んでしまい、今日のフィニッシュは無理と気がついた時にはちょうど真ん中あたり。雨は降っていて日も暮れる。近くのマーシャルにリタイアしたいと伝えたら、「そっか」だけ(笑)。

「ああ、このイベントは、もう誰も何もしてくれないんだ、生きて戻るには自分たちでどうにかしなくてはならないんだ」と悟りました。なんとか無事戻れたときの安堵感は大きく、その経験がこのイベントの核心を理解させました。

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文=上沼 祐樹

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