ビジネス

2020.11.25

資産運用ロボアドNo.1、ウェルスナビを率いる柴山和久の「原点とミッション」

ウェルスナビ 代表取締役CEO 柴山和久


話は5年前に遡る。2015年の春、当時37歳だった柴山は東京・渋谷のプログラミング教室にいた。「日本の働く世代向けに、オンラインの資産運用サービスをつくる」という熱意を胸にマッキンゼー・アンド・カンパニーを辞めたばかりだった。

柴山の経歴はユニークだ。大学卒業後、財務省に約10年間勤めたのちにフランスでMBAを取得。帰国後はマッキンゼーに入り、10兆円規模の資産をもつ機関投資家のサポートなどを手がけた。 そんな柴山がプログラミングを学ぶきっかけとなったのは、優秀なテック人材を探すために相談したある企業のCTOからの一言だった。スーツ姿の柴山を見て、そのCTOがこんなアドバイスをした。

「いかにもマッキンゼーという格好、やめたほうがいいですよ。スーツはジーンズの敵ですから」

ここで言うジーンズとは、IT業界でものづくりの現場を担う人々のことだ。今の自分では、優秀なエンジニア仲間を集めることは難しい。

金融業界でイノベーションを起こすには、自らものづくりの現場を知る必要がある。そう気づいた柴山は、真っ先にジーンズを買いに行き、テックキャンプでゼロからプログラミングを学び始めた。そして、4週間で現行サービスのプロトタイプを製作した。

「エンジニアの苦労や喜びがわかり、彼らの集合知を心からリスペクトできるようになりました。この原体験があるから、サービス開発のための人件費に優先して予算を当てる経営判断をするなど、実際の行動に結びついたのだと思います」

創業から5年間、ピボットすることなく右肩上がりの成長を遂げてきた。その秘訣として、柴山は「原点に立ち返りながら一貫性を保つこと」を挙げる。

「何かがうまくいってないなと感じるときはたいてい、会社の原点からズレている。ズレや矛盾を抱えないためには、原点に立ち返るのが一番いい。原点を再発見することは成長へのターニングポイントになり、経営の一貫性にもつながります」

ものづくりの先にあるのは、働く世代が豊かさを実現できる社会をつくるという、創業当時から変らず掲げ続けるミッションだ。

「まだ、スタート地点にも立てていない。まずは預かり資産1兆円を目指す」。そう語る柴山の目は、まっすぐ原点を見つめていた。


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文=瀬戸久美子 写真=三部正博 ヘア&メイクアップ=内藤歩

この記事は 「Forbes JAPAN No.077 2021年1月号(2020/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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