コロナ禍で急成長したクラウドファンディング市場。購入型クラウドファンディング成立件数No.1企業を率いる連続起業家は何を考えていたのか。
「確かに、流通額も使ってくださる方の数もすごく伸びました。でも、戸惑っている部分も正直あって。一つひとつのプロジェクトが悲痛な叫びのようにも感じる。なので、とてもじゃないけど手放しで『伸びてうれしい』なんて言えない」
クラウドファンディング事業を手がけるCAMPFIREの代表取締役、家入一真は開口一番、そう語る。
新型コロナウイルスの感染拡大は、クラウドファンディング市場を急速に押し上げた。同社の2020年5月の流通額は前年同月比590%の38.9億円、単月支援者も39万人にのぼった。経営難にあえぐ飲食店や宿泊施設などの資金調達を支援するために用意した「新型コロナウイルスサポートプログラム」でも、プログラムを通じて資金調達を始めた事業者の数は11月初旬時点で4200件、支援者数は延べ79万人、集まった支援総額は92億円超に上る。
CAMPFIREに救われた──。そんな声も聞かれる。だが、新型コロナで家入が直面したのは社会の痛みと、スタートアップを率いる者としての敗北感だった。
「僕らが本質的に実現したいのは、金融包摂を通じてギブアンドギブでつながる世界です。その世界が早期で実現し始めているという意味では喜ばしいですが、一方で既存の仕組みをディスラプトするのがスタートアップだとすれば、こういう事態になる前に(変革を)起こし切れなかったことに無力感も感じています」
10代で格安レンタルサーバーを提供するpaperboy&co.(現・GMOペパボ)を立ち上げ、2008年には最年少でJASDAQ上場を果たした。そんな家入がCAMPFIREを創業したのは、東日本大震災が発生した2011年のことだ。以後、「BASE」「リバ邸」など数多くの企業やサービスを立ち上げながら、投資家として80社を超えるスタートアップの支援も行ってきた。
「方向性にあまりブレはないんです。個人が自己表現をするように経済活動を行う時代がやってくるだろう。そのときには、個を中心とした小さな経済圏を複数もつことによって、お互いに重なり合うかたちで支え合う世の中になるだろうと思っていました」
奇しくもそれは、新型コロナの感染拡大によって一気に顕在化しつつある。一見する限りでは、家入が描いた通りのように思える。だが、「物事には悪い面も必ずある」と家入は指摘する。