なぜ、一つの課題に絞って事業展開しないのか──。石山の答えはシンプルだ。
「社会課題解決は簡単ではないので、自分がパッションをもてない社会課題を解決しようとしても続かない。各々が解きたい社会課題を解いて、各々がつくりたい幸せな社会というビジョンを描いて挑戦していくほうが解決につながるのではないかという思いがある。ただ、フォーカスしないことで、難易度は増す。『マチュア(成熟)なスタートアップ』といわれますが、そこはスタートアップらしい挑戦ですね」
その背景にあるのは、かつて恩師から言われた「石山くんは天才じゃないので、合わせ技一本を取ることを常に考えなさい」という言葉だ。そのアドバイスが、イノベーターの条件のひとつ、一人の人間が多様な経験と幅広い知見をもつ「イントラパーソナル・ダイバーシティ(個人内多様性)」につながっている。
石山自身の経歴だけを見ても、中央大学商学部から東京工業大学大学院総合理工学研究科、リクルートホールディングス、同社の新規事業提案制度で新会社設立、リクルートAI研究所の所長を務めるという独自の経験を積んできた。個人を超えて、組織にも応用しようと考えているのかもしれない。
「固定された一個のパーソナリティだけを、一人の人が必ずもたないといけないわけではありません。エクサウィザーズは、ユニコーン企業とゼブラ企業が同居している会社ですし、Aなのか、Bなのか、Cなのか、ではなく、ある種の重ね合わせた状態をもつ、多様性を受容する組織のほうがイノベーションは生まれやすい」
多様な人材が社会課題解決を目的に新たに集い、新結合を起こすという合目的な側面。そして、「優秀な人材を組み合わせ、新事業を数多く生み出す」とカオスを楽しみ、残しながら石山が目指すのは、企業としての事業の成長だ。
「そもそも事業としてインパクトを出せなければ、社会課題は解決できません。設立20年で売り上げ1000億円では、(会長の)春田(真・前DeNA取締役会長)に怒られるだろうなと。(従来の)スタートアップらしからぬスケール感で考えてこれからも挑んでいます」
11月25日発売の「Forbes JAPAN」1月号では、上位受賞者のインタビュー記事や200社を網羅した2021年版「日本のスタートアップ図鑑」などを掲載。また、11月25日16時〜18時に「Forbes JAPAN CEO CONFERENCE」内にて、TOP10起業家が集うオンラインでの「起業家ランキング表彰式」を開催する。
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