「空のF1」2021年開催。時速200キロの空中カーレースが安全な理由

仮想力場プロテクションを搭載した「エアスピーダー」の空飛ぶ電動レーシングカー(A3 Communications)

「空飛ぶクルマ」による世界初のレース「エアスピーダー(Airspeeder)」の開催が2021年に予定されている。

このほど、その戦略・技術パートナーにサイバープロテクション企業のアクロニスが選ばれたと発表された。アクロニスはデータバックアップとサイバーセキュリティの分野で定評のある企業で、この新事業では「スピーダー」と呼ばれる機体同士が空中衝突するのを防ぐために、LiDAR(光による検知・測距)とマシンビジョンの技術を駆使した仮想力場プロテクションを確保する役目を担う。最高時速200キロで「接近しても安全な」仮想力場プロテクションは、成長著しい商用eVTOL(電動垂直離着陸機)分野にも影響を及ぼし、安全対策の開発を加速させることになるだろう。


空飛ぶレーシングカーがエアタクシー時代の幕を開ける


eVTOLにはトヨタやエアバス、ダイムラー、ヒョンデ、ウーバーといった大企業が多額の資金援助を行っており、今後、空飛ぶ電動タクシーによってモビリティー革命が起こる可能性は十分にある。

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ヒュンダイとウーバーが共同開発した空飛ぶタクシー(Getty Images)

いまのところエアスピーダーで使われる機体は速度と敏捷性に特化したマルチコプターを遠隔操作で飛ばしている段階で、大型のドローンといった印象にとどまっているが、最高時速が200キロにも達するスピーダーはeVTOLのたたき台になる可能性を秘めている。

スピーダーはMk4という機種名を付けられて、開発の最終段階にある。出力24キロワットのモーター4基を、500キロワットの交換式バッテリーで駆動させる。機体重量は250キロとされており、これが本当ならF1マシンより優れたパワーウェイトレシオ(出力重量比)ということになる。

従来の自動車産業は、モータースポーツが技術革新を文字どおり「推進」してきた。エアスピーダーの親会社であるアラウダは、アクロニスだけでなくDHLやグローバル金融マネジメント企業イコールズからの投資を活かし、空中のカーレースを行うことでeVTOL開発の推進役になると期待されている。

航空、モータースポーツ、eスポーツといった業界の優秀な人材がパイロット(ドライバーではない)の候補者となる。エアスピーダーという舞台では、科学技術と人間の技量の両方が試されることになる。
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翻訳・編集=門脇弘典/S.K.Y.パブリッシング/石井節子

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