長友佑都の「チーム論」 カギは若手が起こす新しい風にあり

Olympique de Marseille(仏)に移籍し競争と刺激の場に身を置く長友佑都

Olympique de Marseille(仏)に移籍し競争と刺激の場に身を置く長友佑都

2020年11月。およそ1年ぶりに日本代表戦のピッチに立った34歳の鉄人、長友佑都(オリンピック・マルセイユ)が、頻繁に耳にするようになった「ポスト長友」に対し思いの丈を語った。

代表戦の最中、遠征先のオーストリアで残した彼の言葉を振り返ってみると、自分のすべきことを今まで以上に明確にしていることが伝わってくる。出場すれば4度目のワールドカップとなる2022年のカタール大会に向け、彼は、自身と森保ジャパンに必要な刺激と競争に身を置くことを追い求めている。


日本代表チームに対し使われ続けてきた、あるフレーズがある。例えば3度のワールドカップでキャプテンを務めたボランチの長谷部誠が、代表引退を表明した2018年のロシア大会以降、幾度となく「ポスト」長谷部という言葉がメディアを賑わせてきた。

刻んできた軌跡が偉大な選手ほど、そして周囲に影響を与えてきた選手ほど、代表を去る時に後継者が求められる。森保ジャパンも例外ではなく、34歳になった長友佑都が今「ポスト――」の対象になっている。

長友は明治大学サッカー部を退部し、大学4年生にしてFC東京とプロ契約を結んだ直後の2008年5月に日本代表デビュー。干支がひと周りした今年最後のプレーで、国際Aマッチにおける出場試合数を歴代単独2位の「123」に伸ばした。周囲で飛び交う「ポスト長友」に本人は何を思っているのか。

「ポスト長友、好きですよねみなさん。何だかおっさんを外したいみたいなので、おっさんの意地というか魂を見せたいし、長友ここにあり、と思われるようなプレーを見せたいですね」

苦笑いとともに胸中を明かしたのはオーストリア遠征の期間中だった。新型コロナウイルスの影響で今年最初の予定となった10月のオランダ遠征に招集されながらも体調不良で辞退していた長友だが、ランニングで率先して先頭を走り、ピッチ上では誰よりも大きな声を出していた。

「チームを盛り上げていきたい、という気持ちが強いです。若い選手たちや代表での経験がまだ浅い選手たちがいるので、彼らが気持ちよく練習できて、試合にもスムーズにアプローチできるような雰囲気作りというものを、意識するようにはしています」

こう語った長友は、自身が長く君臨してきた左サイドバックに入る23歳の中山雄太(ズヴォレ)、20歳の菅原由勢(AZ)に特に積極的に話しかけている。東京五輪世代のふたりは、ライバルであり、可愛い後輩でもある。彼らを含めた若い選手たちを長友はどのように位置づけているのか。

「僕自身が競争に勝ち、レギュラーとしてチームに貢献したいという気持ちはもちろんあります。ただ、ライバルでもある若い選手たちに、自分の経験を伝えていきたいという気持ちもあるので、よく話すようにはしています。彼らが育つことによって、僕も競争というポジティブなエネルギーをもらえると思っていますし、何よりそのエネルギーを僕自身が欲している。競争相手がいる厳しい環境の方が、間違いなく成長できるので」

若手の台頭が重要であるというコメントを長友が発するのは今回が初めてではない。同じ1986年生まれの本田圭佑、岡崎慎司らとともに抱いていた心境を引き合いに出しながらこう語ったことがある。
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文=藤江 直人

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