長友佑都の「チーム論」 カギは若手が起こす新しい風にあり


「若い選手たちには、僕らが代表に入ったときのようにもっとガツガツやってくれればと思っている。遠慮なんてしなくていいから、自分が中心になるぐらいの思いで、日本代表を引っ張ってやるんだというギラギラしたメンタルをもってほしい。そういったメンタリティーは必ず自分を成長させる。僕自身もそうだったし、(本田)圭佑もオカ(岡崎)も代表に初めて入ったときから『絶対に上り詰めてやるんだ』という、ギラギラしたような思いを常に抱いていたので」

決して上から目線で進言しているわけではない。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督に率いられていた2016年当時の代表チームは、図らずも世代交代が急務だと指摘されていた。若手とベテランが、挑む者と挑まれる者として切磋琢磨し火花を散らしあっていく過程で、チームという組織が成長していくと信じて疑わなかった。

「遅かれ早かれ突き上げられるときは来るし、若い選手が出て来ることによって僕らも刺激を受けて頑張ることができる。僕らがポジションを奪ってきたように、若い選手たちがそうしていかないとね。30歳を超えた選手が何人も、また何年も出続けている時点で世代交代、底上げが上手くいっていない証拠でもあると思うし、そういう状況は何より日本サッカー界にとってよくない。もちろん長く代表でプレーさせてもらっている選手が、経験から来る落ち着きをもたらすことも大切だけど、僕たちを押しのけるような選手がどんどん出てこないと、世界の舞台で勝つためには厳しくなってくるので」

長友や本田、岡崎らが先輩選手たちからポジションを奪った図式は、新陳代謝が必要な代表チームでは必要不可欠だ。現在本田は森保ジャパンでは一度も代表に招集されておらず、岡崎も昨年6月に南米ブラジルで開催されたコパ・アメリカが現時点で最後の代表活動となっている。

対照的に長友は森保ジャパンでも左サイドバックのファーストチョイスであり続けた。出場すれば4度目のワールドカップとなる2022年のカタール大会を見すえながら、34歳になった長友は明らかに変化しているように見える。ポスト長友に対しての「反骨心」とはまったく異なる考え方を言葉にしてくれた。

「『ポスト長友』で探すから難しい部分があると思うんですよ。いい面も悪い面もみなさんが『長友だったら』と比べてしまうと、僕のポジションに入る若い選手たちはやりづらいと思います。なので『ポスト長友』よりも、日本代表の左サイドバックとして純粋な目で探した方が、新しい風を吹かせて、新しい競争を作り出していくんじゃないか、と」

10代から培ってきた無尽蔵のスタミナと、徹底したウエートトレーニングで独自のプレースタイルを確立。岡田武史から森保一まで歴代の日本代表監督の信頼を勝ち取ってきた。タッチライン際を何度も上下動するアグレッシブな動き、鍛え上げられた強靱なボディは1対1で発揮される強さに反映されてきた。

簡単にはコピーできないという自負と、オリジナルの武器を携えてほしいというエールが相まって「ポスト長友」というフレーズに自ら警鐘を鳴らした言葉だ。
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文=藤江 直人

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