シンクタンクであるパーソル総合研究所が発表した2030年の労働市場の未来推計をみてみると、労働需要が7073万人なのに対し、労働供給は6429万人と、2030年時点で644万人の人手不足が生じると予測されている。
すでに、女性への就労支援、シニアに向けた定年延長、外国人就労のための制度改正など、官民ともに対策に取り組んでいるが、これらの対策を打ったとしても、644万人の人出不足の半分程度しか確保できないと言われている。今、デジタル変革による生産性向上が期待されているのは、この不足する労働力を埋めるためなのだ。
デジタル変革による生産性向上への期待
デジタル変革による生産性の向上に期待が集まる理由は、従来型の生産性向上とデジタル変革による生産性向上の違いをみてみればわかる。
生産性向上といえば、従来は基本的に業務の効率化のことを意味してきた。これは、既存の仕事のプロセスを大きくは変えずに、無駄を無くすことでコストを下げる手法だ。具体的には、作業時間、人の動き、在庫量などを適正にコントロールすることで、コストを下げることが目指される。
これに対して、デジタル変革による生産性の向上とは、デジタル技術を活用して、抜本的に業務を見直し、ビジネスモデル自体を改革していくことを意味する。
デジタル技術を活用すれば、従来は人間にしか成し得なかった仕事を、AIによって代替することさえ可能となる。このように、ビジネスモデルの最も根本的な部分にまで、改革のメスを入れることができる点がデジタル変革の強みであるが、そのアプローチは、以下の3つに大別することができる。
1つ目は、コミュニケーションのデジタル化だ。これはリモートワークに代表されるように、コミュニケーションをデジタル化することで、場所や時間に囚われずに仕事を進めるアプローチだ。
2つ目は、定型作業の省力化だ。これはRPA(Robotic Process Automation)に代表されるように、定型化された単純作業を、ソフトウェア型のロボットが代行・自動化するアプローチだ。例えばメーカーであれば、これによって出荷状況の問合わせ対応の効率化や、煩雑な在庫管理業務を自動化することができるだろう。