ビジネス

2020.11.24

2030年には644万人の人手不足に? 企業がデジタル変革に取り組むべき理由

労働力不足を補うためデジタル変革による生産性向上が期待されている(Unsplash)



リモートワークを阻むのはベテラン社員?

3つ目は、複雑な作業の省力化だ。これはAIに代表されるように、人間が行うには複雑で、複数の答えがある場合などに、何億ものパターンをシミュレーションし最適な解を導き出すアプローチだ。例えば、新製品の設計をサイバー空間で行うことで、効率的な製造工程をシミュレーションしたりすることができる。

これらのデジタル化のアプローチを良く理解し、組み合わせていくことで、仕事のプロセスを劇的に変化させ、単なる業務効率化とは違う大きな効果が期待できるのだ。

リモートワークを阻むベテラン社員?


とはいえ、いざデジタル変革に取り組んでみても、それが習慣化し定着するまでには問題やトラブルはつきものだ。変革に伴うトラブルを解決する努力や創意工夫ができない場合は、逆に生産性を落としてしまうこともある。

ある会社の経営者は、「リモートは駄目ですね。社員達からも不満がでたので、来週から全社員出勤させることにしました」と述べ、リモートワークを撤回しすぐに元に戻してしまったという。

どれくらいの期間リモートワークに挑戦したのかと聞いてみると、なんとたったの1週間だった。また、社員達からはどんな不満がでたのかと聞いてみると、経営者や現場担当者には問題なかったのだが、中間管理職がやることが無くなってしまい、彼らの反対により断念したそうだ。

人は、自分の慣れ親しんだ習慣を変えることを嫌う。今後、デジタルシフトが進んで行く際に、一番のハードルになるのは、人の固定概念であり、慣れ親しんだ習慣だ。特に成功体験を持ったベテラン社員は、染みついた習慣を変えることが出来ずに、デジタル変革を極端に恐れる傾向があるようだ。デジタル変革をするときには、こういった抵抗も予測した上で、不退転の覚悟で継続し、習慣化するまで続けることが大切だ。

事実、デジタル変革によって労働環境に変化を起こすことができれば、企業の採用の自由度は格段に増すだろう。時間的・距離的制約がある人々にとって働きやすい環境になるだけでなく、出産や子育てによる制約がある人、年齢を重ねて体力に衰えを感じるようになった人も働けるようになる。

結果として、潜在的な労働力をうまく活用することが可能となり、全体的な労働人口を増やすことにつながるのだ。日本において労働力人口が減少することを避けることはできない。デジタル変革による生産性向上に積極的に取り組む企業こそが、時代を先導していくことになるだろう。

文=鈴木康弘

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