コロナ禍のような超弩級危機に備える「国家的リスクファイナンス」を

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「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」に基づき、中央防災会議の意見を聴いたうえで、当該災害を激甚災害として指定し、併せて当該災害に対して適用すべき災害復旧事業等に係る国庫補助の特別措置をとることができる。

これにより、地方公共団体の行う災害復旧事業等への国庫補助のかさ上げや、中小企業事業者への保証の特例など、特別の財政援助・助成措置の実行が、事前に法的に整備されている(この仕組み自体の賛否はあるが)。

感染症危機は、発生時が被害のピークでその後は低減する自然災害とは性質を異にするものの、一度発生した場合の被害は甚大であり、結果的に大きな経済影響を与えるため、事前の備えが重要である点は同じだ。しかし、自然災害対策に比して、感染症危機に対する国家のリスクファイナンスは準備不足を指摘せざるを得ない。

今回準備された補正予算の金額規模(4月成立の1次補正は約26兆円、6月成立の2次補正は約32兆円)を先例・前例にしては、財政の観点から持続可能的な危機管理は実現することは難しい。

将来発生する可能性のある更に危険度の高い感染症危機というテールリスクを想定し、通常の予算編成とは異なる思想、制度設計のもとに、感染症危機などを含めたオールハザード対応型のリスクファイナンスの仕組みの構築等を通じて、財政プリペアドネス強化していくべきだろう。

直接の物理的損害がない場合でも発動するパラメトリック型、または実損補償型の保険も、国際的保険市場には存在する。よって、今後は、政府がリスクを保有する引き受け限度を考慮して、一部は保険、再保険市場にリスクを移転する国家的なリスクファイナンス施策(5)を、自国のため、そして経済先進国との協調のためにも促進すべきである。災害多発時代におけるグローバルなリスクファイナンス市場を、日本がイニシアティブをとって国際協調とともに市場開拓をすることが、防災大国日本が果たすべき次代の危機管理と思う。

(1)Keishi Abe, Nanao Ishibashi, Hiroshi Matsumura & Yasuhiro Suzuki.(2019). Securing Resources for Health Emergency Management. Health Systems & Reform, 5:2, 104-112.

(2)Keishi Abe, Nanao Ishibashi, Hiroshi Matsumura & Yasuhiro Suzuki.(2019). Securing Resources for Health Emergency Management. Health Systems & Reform, 5:2, 104-112.

(3)World Bank, Fact Sheet: Pandemic Emergency Financing Facility(2020, April 27)
https://www.worldbank.org/en/topic/pandemics/brief/fact-sheet-pandemic-emergency-financing-facility

(4)濱田秀明、「災害リスクファイナンス〜世界銀行の役割と日本との連携〜」、ファイナンス(2019年5月)

(5)OECD Recommendation on Disaster Risk Financing Strategies(2017年2月)

文=蛭間芳樹、阿部圭史

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