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新型コロナウイルスのパンデミックにより、日本のリスクファイナンスの準備不足が露呈した。今回のように、経済に大きな影響を与える危機に対して、どのように備えたらいいのだろうか。

Forbes JAPANオフィシャルコラムニストで日本政策投資銀行の蛭間芳樹氏と一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ研究員の阿部圭史氏との共著論考を紹介する。


21世紀の20年間に、日本に脅威を及ぼした感染症危機の回数は、計10回を超える。重症急性呼吸器症候群(SARS)やH7N9鳥インフルエンザ、エボラ出血熱、中等呼吸器症候群(MERS)のような、国家に対して一定程度の脅威を及ぼす「感染症危機」は、2年に1回の高頻度で発生している。

これらの感染症危機のうち、国家全体に遍く負の影響を及ぼす「パンデミック」級の超弩級の危機は、2009年のH1N1新型インフルエンザに2020年の新型コロナウイルス感染症と、10年に1回であった。

このように、それほど頻繁には起こらないパンデミックのリスクだが、一度発生すると超弩級の影響を及ぼす事象を、金融用語では「テールリスク」と言う。

コロナ民間臨調の提言


2020年10月、筆者も参画した「新型コロナ対応・民間臨時調査会(コロナ民間臨調)」の検証報告書が公表された。その提言の1つに、以下のようなものがある。

「パンデミック対策などの国家的なテールリスク事案への備えについては各省予算とは別枠で予算確保する(感染症危機への備えは、全国的なPCR等検査体制の処理能力やマスクなどの備蓄量について数値目標を設定し、緊急時に必要となる対応能力を具体化する。その上で、厚労省及び地方自治体の予算編成において、十分な財政的手当てがなされているかを政府において一元的に継続的にモニタリングする。)」

上記のコロナ民間臨調の提言は、有事に備えた、平時おける予算確保スキームについて述べたものだ。これまで、2年に1回という頻度で感染症危機が世界のどこかで発生し、日本も脅威にさらされていたにもかかわらず、それらの危機の際に大きな役割を果たす、国立感染症研究所や保健所、地方衛生研究所の予算は削減され続けてきた。

もちろん、10年に一度大規模に発生するパンデミック級のテールリスクに対する特別な備えの有無は、言わずもがなであり、そのような重大なリスクに対して、平時から予算を確保する必要性について言及したこの提言は重要だ。

しかもこれに加えて、感染症危機発生後の有事における機動的な予算確保スキームも、同時に必要である。

2014年のエボラ出血熱の初動においては、国際社会が資金拠出を行うまでに2カ月もかかり、WHOや感染国が機動的な対応を行うことができなかった。

文=蛭間芳樹、阿部圭史 

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