別の書き方をすると、ユーザーの世界を豊かに膨らませてくれる。最近のいい例が「ジャガーI-PACE」だ。
I-PACE(アイペイス)は、ジャガー初の量産BEV(バッテリー駆動のピュア電気自動車)。日本には2019年春に導入された。バッテリー容量は90kWhと大きく、フル充電での航続距離は470キロと長い。
乗ると、意外なほどスポーティ。車体は全長4.7メートルと小さくはないものの、操舵、つまりステアリングホイールを動かして、たとえば高速道路でのレーンチェンジをしたり、カーブを曲がっていくときに、軽快にクルマが動く。バッテリーなど重量物を床下に収めて低重心化を実現するなど、ジャガーの面目躍如という気がする。
ドライバーと一体化した動きを体験すると、さすがレースカーに起源を持つジャガー、と感心させられるほどだ。
スタイリングも、SUVでありながら、リアゲートを寝かせてクーペ的な躍動感を表現しながら、アクティブなイメージを作り出している。一方で、広い室内と広い荷室を備え、パッケージもよく出来ている。居心地のよい後席を味わうと、一種のリムジンとして使ってもいいだろうと思えてくる。万能選手なのだ。
もうひとつ注目すべきが、ジャガージャパンの施策。I-PACEによるワンメイクレース開催だ。そもそも2016年から電気で走るF1ともいえるABB FIA フォーミュラE選手権にも熱心に取り組み、BEVの可能性を知悉しているジャガーならではの活動だ。ワンメイクレースによって、ブランドとそのプロダクトへの信頼が厚くなるし、ユーザーの楽しみにも繋がる。マーケティングの真価とは、ユーザーとWin-Winの関係を築くことだと、この新世代の乗用車は教えてくれるのだ。
JAGUAR I-PACE S
駆動形式:AWD
全長:4695mm
全幅:1895mm
全高:1565mm
最高出力:400PS/696N・m
価格:9760000円(消費税込み)
問い合わせ:ジャガーコール 0120-050-689
COLUMN 自動運転の課題のひとつ 「乗り物酔い」との取り組み
乗り物酔いは、視覚情報と、内耳をはじめ皮膚と身体が感じる動きとのズレから生じるそうだ。そこにジャガー・ランドローバーが注目している。いま同社をはじめ世界の自動車メーカーは、自動運転の開発にしのぎを削っている。
そこで出てきた問題がこの乗り物酔いだ。自動運転の車両に乗っていても、酔わずにいられる制御プログラムを、ジャガー・ランドローバーでは開発中だという。
急な加速や減速をなくし、レーンキープシステムによる走行ライン制御を最適化する。それをコンピューターにプログラミングするのだ。走行中の振動で発生する低周波音も気分を不快にさせるので、電子制御サスペンションの細かい働きもまた重要になるという。
完全自動運転化が実現したあかつきには、乗員がリラックスして読書など楽しめるために、自動化されたクルマはすぐれたショーファーであるべきなのだ。
【連載】クルマの名鑑
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