燃料電池の本格普及は「鉄道」から、ディーゼルエンジンCumminsの提案

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ディーゼルエンジンの最大手メーカーである「カミンズ(Cummins)」は、ゼロエミッション時代の到来を見据え、水素燃料電池などの新たなテクノロジーに意欲を燃やしている。同社のコア事業はトラック向けエンジンだが、今後は電車やバス向けのエンジンに大きなビジネスチャンスがあると考えている。

インディアナ州コロンバスに本拠を置くカミンズは、船舶や大型トラック、バス向けのディーゼルエンジンを製造している。同社は11月16日、「Hydrogen Day」と呼ばれる水素燃料電池技術に関するイベントを開催し、燃料電池や定置式発電システム、燃料タンクのほか、企業が自前で水素を製造するための電解槽を提供するという戦略を打ち出した。

同社の会長兼CEOであるTom Linebargerは、今後水素燃料市場が活性化する上では、運送業者や鉄鋼メーカーも水素を活用してCO2削減を図ることが望ましいと考えている。

「化石燃料から脱却しなければならないことは誰もがわかっている。問題は、規制緩和や他の理由によってゼロエミッション化の経済性がいつ改善するかということだ。補助金が支給されている分野では、既に経済的メリットが出ている。水素燃料電池の導入が進んでいるのは、電車やバスだ。なぜならば、これらは2地点間を往復するため、始点と終点に水素ステーションを設置すれば十分だからだ。投資効率を高めるためには、水素ステーションを大量に設置することを避け、個々の設備の稼働率を上げることが重要だ」とLinebargerは話す。

カミンズが水素燃料電池を強化する背景には、運輸業界全体のゼロエミッション化推進が挙げられる。トヨタやホンダ、ダイムラー、現代自動車は、過去10年間に渡って水素燃料電池車を販売しているが、水素ステーションの数が限られていることや、テスラに代表されるEVの普及が妨げとなり、乗用車の分野では苦戦が続いている。

イーロン・マスクは燃料電池を否定


しかし、EVに比べて軽量で燃料補給が短時間で済むことなどから、大型トラック向けでは事業機会が広がっている。トヨタや現代自動車、ダイムラー、スタートアップのニコラなどは数十億ドル規模の投資を計画しており、カミンズも大きなチャンスを見出しているのだ。

燃料電池はオンデマンドで発電し、排出されるのは水だけだ。クリーンな乗り物として数十年前から宣伝されてきたが、コストの高さや耐久性、水素ステーションの数が少ないことなどから普及は進まなかった。また、イーロン・マスクは、バッテリーに比べて燃料電池は非効率だとして、“fool cell”と馬鹿にしてきた。

しかし、水素を天然ガスからではなく、再生可能エネルギーから生産できるようになって低コスト化が実現すると、多くの自動車メーカーは燃料電池に大きな可能性を見出すようになった。
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編集=上田裕資

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