燃料電池の本格普及は「鉄道」から、ディーゼルエンジンCumminsの提案

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Linebargerは、マスクの発言について「1つのソリューションを保有している者は、自身のソリューションを擁護するものだ」と述べた。「製鉄所や製油所でも、運輸業界と同じように水素が大量に消費されるようになるだろう。これらの分野は、バッテリーでは対応できない」と彼は話す。

カミンズによると、水素を生成する電解槽の売上は、2025年までに4億ドルに達する見込みだという。

バイデン政権の追い風


米大統領選で、ジョー・バイデンがドナルド・トランプに勝利したことは、カミンズにとって追い風となるかもしれない。トランプ大統領は、化石燃料の開発を重視し、厳しい燃費規制を撤廃した。これに対し、バイデンは気候変動対策としてCO2排出を削減する政策を重視し、EV利用の促進を図ろうとしている。

カミンズの強みは、ディーゼルとバッテリー、水素という3種類の技術を網羅していることだ。「我々は、顧客に対してそれぞれの技術の利点を正直に説明していきたい。我々は、既にバイデン次期政権と連携し、我々の技術を奨励してもらうよう働きかけている」とLinebargerは話す。

カミンズで新電力事業部門を率いるAmy Davisによると、同社の究極のゴールは、大型トラック向けに燃料電池パワートレインを供給することだという。しかし、そのためにはディーゼルエンジンと同等の経済性を実現する必要があり、コスト低減を図るのにしばらく時間を要するという。

「電車」はコスト合理性が高い


「我々が短期的に電車向け事業に専念しているのは、パワートレインと燃料のコストが操業コストの50%と、大型トラックの80%に比べてはるかに低いことが理由だ」とDavisはプレゼンテーションの中で述べた。カミンズは、フランスのコングロマリット、アルストム(Alstom)と提携し、同社がドイツで展開する燃料電池列車「コラディア・リント(Coradia iLint)向けに燃料電池パワーシステムを提供している。

「電車は、トラックと異なり走行ルートが固定されている上、水素を補給するために必要なインフラのコストが少ない。さらに、公的な補助金を利用すれば、水素列車を購入する方が既存の鉄道を電化するよりも安く済む。これらの理由から、燃料電池の導入はまず電車やバスで進み、大型トラック市場に浸透するのはかなり遅れてからになるだろう」とDavisは述べた。

ニューヨーク証券取引所に上場するカミンズの株価は、11月16日に2%下落し、231.86ドルとなった。

編集=上田裕資

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