機械式時計とウイスキーに感じる親和性

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サントリーコミュニケーションズ代表取締役社長の水谷徹さん。グランドセイコーを愛用する理由を語る。


セイコーが誇る10振動/秒のハイビートムーブメントを搭載したGSブティック限定モデル。第2時間帯を知ることができるGMT機能を備え、24時間目盛りとGMT針によって表示される。ブルーカラーのダイヤルには、機械式時計の製造を担う岩手県・グランドセイコースタジオ 雫石から望む、岩手山の山肌を表現したパターンを採用している。ケースバックのガラスには獅子の紋章が輝く。

かつて“サントリー宣伝部”といえば、開高健や山口瞳という作家を輩出し、『ドキュメント サントリー宣伝部』なる書籍も刊行されるほど、世に知れた存在であった。現在でもその体制は維持され、インハウスでデザイン・宣伝部門をもつ、日本でも数少ない会社のひとつだ。

「いまや、ただ企業や商品を広く告知すればよいという時代ではありません。重要なのは、どうすればお客さまがサントリーという会社やブランドのファンになってくれるか。サントリーの社名はみなさまに知っていただいているので、いまは企業や商品、ブランドとお客さまの絆が深まるように、エモーショナルな結びつきを築くことを重視しています」
 
それは、商品の性能の差が生み出すものとは限らない、と水谷さんは言う。

「時計であれば、正確性では機械式よりもクォーツ式が勝りますが、多くの人がブランドを好きになる理由はそこではないですよね。それはなにか、ということです」
 
水谷さんは時計好きだ。自分では「決してマニアではない」と言うが、時計についての語り口から、時計に詳しいのは確かだ。特に機械式時計に関心をもちはじめたのは、社業であるウイスキーがきっかけだったという。

「ウイスキー部長に就任した当時、ウイスキーはいまのように売れていませんでした。つくり手が時間をかけて丁寧に継承してきたウイスキーをみなさんに知ってほしい、そう考えている時期に、機械式時計にウイスキーと通じる部分を感じました」
 
1923年から100年近く受け継がれてきた伝統あるウイスキーづくりを、時計づくりに重ねた。「樽まで自社でつくる」こだわりや、職人が時を重ね継承していくことなど、共通点の多い腕時計。とくに親和性を感じたのがセイコーという企業だった。
 
水谷さん愛用モデルは、「グランドセイコー」のなかでも10振動/秒という、セイコーが誇るハイビートキャリバー「9S」搭載の限定モデル「SBGH267」だ。

「文字盤の色が自分の好みのブルーで、かつ繊細な秒針のゴールドのコントラストが美しかった。また、文字盤に施された彫りは見れば見るほど手が込んでいて素敵だったという点もあります。私は1961年の早生まれなので、グランドセイコー(1960年)と同学年にあたります。そんな運命的な結びつきも感じました」
 
サントリーとセイコーには、海外から学び、日本から世界一を目指している、という共通点もある。「やってみなはれ」とはサントリーの不変の価値観だが、世界を狙うその精神には、同じ情熱が通う。


「SBGJ235」の文字盤。透明感のあるサファイアクリスタルガラス、そしてアプライドなバーインデックスは視認性もよく、実用性を証明している。


14mmという程よい厚さのケースには、セイコーが誇るザラツ研磨の技術を駆使した、ポリッシュとヘアラインの2つの仕上げが施されており、歪みのない鏡面仕上げの面を多用。

GRAND SEIKO Heritage Collection SBGJ235

ムーブメント:自動巻き Cal.9S86
ケース素材:ステンレススチール
ケース径:40mm
価格:67万円
問い合わせ:セイコーウォッチお客様相談室 0120-001-012


水谷 徹◎サントリーホールディングス 常務執行役員/サントリーコミュニケーションズ 代表取締役社長。1961年生まれ。1983年サントリー入社。酒類事業本部企画部部長、ウイスキー部長、スピリッツ事業部長を経て、2014年サントリービール初代社長に就任。19年サントリーホールディングス常務執行役員関西担当就任、20年より兼任で現職。

text by Ryoji Fukutome / edit by Tsuzumi Aoyama

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 11月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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