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「ミラー」の創業者、ブリン・パットナム(Getty Images)

米国で爆発的にヒットしている鏡型のデバイスを使ったフィットネスサービス「ミラー」。6月にルルレモンが5億ドルで買収し、話題をさらった。わずか2年の急成長をひもとく。


ニューヨークが新型コロナウイルスの感染拡大によりロックダウンに入る直前の3月13日。デジタルフィットネス事業を手がけるスタートアップ「ミラー」の創業者、ブリン・パットナム(36)は、オフィスを閉鎖し、約100人の従業員を帰宅させた。

元バレリーナのパットナムは現在、同じく起業家である夫のローウェルとアパートメントにこもっている。夫婦は交代しながら、在宅ワークと育児をこなしている。唯一の息抜きはワークアウトだ。パットナムは自社が開発した、インタラクティブディスプレイになっている大型の鏡を2台自宅に持ち帰り、1台は寝室に、もう1台はゲストルームに置いた。

そのころ、エクササイズ用のバイクを使った在宅フィットネスサービスを展開するニューヨーク発ベンチャー「ペロトン」は、株式時価総額130億ドル超を記録。コロナ時代に最も勢いのあるフィットネス企業となっていた。だが、そこに個人企業のミラーが、ペロトンにない唯一の強みを武器に、肉迫している。

ミラーは、コンパクトなのだ。横56cm×縦132cm、厚さ3.6cmのディスプレイは、見た目も機能も普通の鏡と変わらない。ところがいったん電源を入れると、レッスンをするインストラクターと鏡に映った自分の姿が同時に見える。また、画面の端のほうには、自分の運動データが表示され、運動目標の達成具合を追うこともできる。

ユーザーはまずディスプレイ本体を1495ドルで購入。さらに月額39ドルの利用料で、有酸素運動やバーレッスン、筋力トレーニング、ヨガなど、多彩な運動プログラムをライブストリーミングで視聴できる。



初期出資者の一人であるスパーク・キャピタルのジェネラル・パートナー、ケヴィン・トーは言う。

「鏡にスクリーン機能を入れてワークアウトのプラットフォームにしようとは、誰も考えつかなかった。今から考えるとわかりきったことにも思えますが、当時は違いました」

国際ヘルスラケットスポーツクラブ協会によると、従来型のジムやフィットネスクラブ事業の市場規模は約1000億ドルに上るという。ペロトンが初のインターネット接続型フィットネスバイクを発売してから5年後の2018年9月に、パットナムはミラーを発売した。

彼女は当初から、徐々にではあるが、いずれ確実に、自宅でのトレーニングが主流になっていくと予見していた。ここにきて多くの人が自宅待機を強いられ、在宅フィットネスのニーズが高まっている。おかげで彼女の事業は絶好調だ。米フォーブスが、将来の企業価値が10億ドル以上になると期待されるスタートアップ25社を選ぶ「ネクストビリオネア」にも名を連ねる。

「まだ4月なのに、クリスマスシーズンが来たみたい(に売れている)」とパットナムは言った。

文=エイミー・フェルドマン 写真=ジャメル・トッピン

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