精神疾患と新型コロナウイルス感染症の関連性についてはこれまでも報告されていたが、英オックスフォード大学とNIHR(英国立衛生研究所)オックスフォード健康・生物医学研究センターのチームによる大規模な調査研究で確認された。査読を受けた論文がこのほど発表された。
チームは新型コロナウイルス感染症の罹患者6万2000人あまりを含む米国人6900万人の健康記録を調査。新型コロナウイルス感染症の罹患者と、別の呼吸器感染症や骨折、インフルエンザ、皮膚感染症といったほかの病気の罹患者を比較し、精神疾患の診断例の変化が新型コロナウイルスへの感染と関連しているかどうかを分析した。
その結果、新型コロナウイルス感染症の罹患は、すべての精神疾患ではないものの、不安障害や鬱病、不眠症といった一部の精神疾患の発症リスクを高めることが確認された。
新型コロナウイルス感染症の罹患と、精神疾患のうち、統合失調症など精神病性障害と新たに診断される例との関連性については、はっきりしたものは認められなかった。反面、新型コロナウイルス感染症の罹患が、すでに精神病性障害を抱えている人の再発リスクを高めることは確認された。
精神疾患と診断されたことがある人は新型コロナウイルス感染症と診断される確率が65%高いという「予想外」の発見について、研究チームのマックス・タケは、ほかの要因がかかわっている可能性もあるため一段の研究が必要だと指摘した。一方で、精神障害は新型コロナウイルス感染症の「リスク要因の一つ」に加えるべきだと提言している。
新型コロナウイルス対策のソーシャルディスタンシング(対人距離の確保)をめぐっては、孤立や不安、その他広範囲に及ぶ変化によって、メンタルヘルス危機が差し迫った問題になっていると、かねて論文や報告書で警告されてきた。今回の研究は問題の重大さを明確に示した格好だ。
研究を率いたオックスフォード大のポール・ハリソン教授(精神医学)は、新型コロナウイルス感染症を生き延びた人はメンタルヘルス問題を抱えやすいという懸念を裏づける結果になったと説明。原因や新たな治療法を緊急に究明するよう促すとともに、そうした人に専門のケアを提供するサービスを用意する必要があると訴えている。