MIYAVIらから若者へ「未来のために正しくしなやかに狂おう」

ミュージシャンのMIYAVIと社会起業家の牧浦土雅


小国:僕自身は、東京五輪という「スポーツの祭典」の裏で、社会を動かす、世界を動かす若者たちに光を当てる祭典をやろうぜという宮城さんたちの志に共感し、それを実現してみたいなと燃えていました。多くの人が、オリンピックはその意義や大義が薄れ、形骸化していると感じ始めているこのタイミングで、「若者たちに光を当てる」という狼煙をあげることがいいと素直に思えたのがかかわるきっかけでした。

その渦中で、新型コロナウイルス感染により東京五輪が延期され、対抗軸がなくなるなか、「何をすべきか」で改めて悩みました。僕がコロナ禍で感じていたのは「世界の風景が、自分たちの意志ではなく、コロナで書き換えられているという実感」でした。だからこそ、「自分自身の意思とイマジネーションで、世界の風景を書き換えていくんだ」という主体性ある姿勢の人たちが集えて、「それって、いいよね」「わたしたちも乗っかってみよう」と声をあげられるような場を作りたかったんです。

その中で、「Hack the world=世界を書き換えよう」という問いこそが、いま、世の中に投げかけるコンセプトだと思うに至りました。このコンセプトを掲げて、今回登壇してくれたVision Hackerや若い世代をと話をしていると、「何ができるかわからないけど、何かやりたい」と皆がどんどん目を輝かせてドライブがかかっていくんですよね。そんな姿を見る中で、このコンセプトが間違っていない、と確信を持っていきました。

実際、イベント・生配信を開催し、3000人の参加者でした。テレビ製作者だった視点からすると、数字だけ見ると少ない。ただ、よく見ると、離脱が少なく、長丁場を皆がずっと付き合ってくれた、燃えてくれた若い世代がいました。僕はこの事実がすごいことだなと思っています。


当日登壇した「Vision Hacker」の一部メンバーたち。ガーナを拠点にサハラ・アフリカの小規模農家支援を手がけるDegas・CEOの牧浦土雅。ソマリアを中心に「テロを止める、紛争を解決する」をミッションにして、ギャングやテロリストを対象にした脱過激化・積極的社会復帰支援をするNGOアクセプト・インターナショナル代表理事の永井陽右、医療者・企業・行政・市民・患者などみんなで命の大切さと未来について行動するプロジェクト「inochi未来プロジェクト」理事の寺本将行など。

MIYAVIさんが、フラットな目で若い世代と対話をしてくれて、50人の高校生がずらっと並んでいるところを面白がって「やろうぜ」と言ってくれたことが彼ら彼女には嬉しかったらしく、すでに新しいプロジェクトが生まれています。

また、最後に、「難民問題にコミットしたい」と言った高校生がいたのですが、仕込みでもなんでもなく、4時間半見ていたら、言わずにはいられなかったと言っていました。「Hack the World」は、自分が主語で世界を書き換えようぜ、エソラゴトを思い切り叫んでいいんだよというコンセプトでやりましたが、最後の最後にどうしても叫ばずにはいられないと発言した女性がいたことは、数ではなく、スタートとして大きな意味があったと思います。

終了後も、ある大学生から「Hack the Worldを見ていて、悔しくて悔しくてたまらなくなりました」というメッセージがきました。現在、20歳の米国大学に進学している人で、「こんなにも動いている同世代がいて、自分の言葉で話ができる同世代がいる中、私は何をやっているんだろう」という思いが止まらなくなって連絡をくれた。

同じメッセージを協賛しているビル&メリンダ・ゲイツ財団日本駐在代表の柏倉美保子さんにも連絡をして会いにいったと言います。心が動くだけでなく、行動までする人が出たことがあの4時間半の意味だったと思います。
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文=山本智之

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