フィリピンでプロサッカー選手となった野田氏
得点王でも契約は更新されず。ようやく、現役引退を決意
チームにとって僕は“助っ人”。絶対に結果を残さなければいけませんでした。
「とにかくチームに貢献して、1部リーグ昇格を支えたい」という意識で試合に臨んだ結果、リーグ得点王のタイトルを獲得。チームも1部昇格が決まったんです。
高校・大学では試合に出られなかった僕が、フィリピンでプロサッカー選手になってタイトルを獲得できた。環境が変われば夢を叶えられることもあると知りました。しかし、プロに翌シーズンの契約保証などありません。その年限りで僕は契約を切られてしまったんです。
ようやく、気持ちの整理が付きました。プロサッカー選手を引退することに決めたのです。
セカンドキャリアは通訳。異国でプレーする外国人選手の気持ちに寄り添って
現役引退後は、2019年からJリーグクラブで英語通訳を務めています。
通訳の話をもらったときも「1週間で返事が欲しい」と言われて。僕以上に実力がある人は多くいる中で、今回も即答できたからこそ、チャンスを掴めたんだと思います。
海外でプロサッカー選手としてプレーした経験は、通訳業務にとても役立っています。
最初のアルゼンチンでの生活がとても寂しかったのを覚えていますし、自分が点を取ることでしか自分の価値を証明できない外国人選手のプレッシャーも、経験者として理解を示すことができます。
言葉が通じずコミュニケーションが取れないと、ストレスは積もり積もっていくんですよね。特に日本人選手には英語を話せる人が少ないから、話し相手もいない。
そんな中で試合に出られないと、「なんで俺はここにいるんだろう」と悩んでしまうもの。だから、そういう思いを敏感に察して、僕が話し相手になったり、友達のように一緒に出掛けたりして、リラックスしてもらえるようにしています。
また、外国人選手の人柄はサポーターには伝わりづらいもの。選手の人間性を知ってもらって、サポーターからより応援される選手になってほしいという思いがありました。そこで始めたのが、「#通訳目線」というハッシュタグを付けてのSNSでの発信です。
発信して、サポーターが温かいコメントをくれたら、外国人選手も自然と「こんなにいいサポーターがいるチームなのだから、もっと頑張ろう」と思ってくれます。