──来年に向けて、雑誌創刊の準備もしていると伺いました。どのような発信を目指していますか。
海外の人たちがこれまで「知ることができなかった日本のカルチャー」を発信したいです。ファッション誌ですが、中身はポリティカルな内容にしたいです。来年中には創刊号を出したいと思っていて、1年に2回発刊する予定です。
日本が好きな人や、日本で仕事をしたい人にとっていいコンテンツにしたいと思います。「外国の方から見える日本」と「日本の方が見る日本」は違いますよね。渋谷のスクランブル交差点のような代表的すぎる景色は、日本のほんの一部にしかすぎません。もちろん日本の方にも楽しめる内容にして、英語版と日本語版を作ろうと考えています。
ただ、コロナショックで前進するのが難しい状況でした。ミーティングも集まってできず、オンラインで進めてきました。
──雑誌ビジネスについては、国木田さんがCEOだと伺っています。
この事業では私がCEOであり、パートナーと2人で経営しています。加えて、ブランディングエージェンシーである「MINDSET」を巻き込み、雑誌創刊へ向けて奮闘しています。 私は全体を統括する編集長の役割。PRやマーケティング、営業、編集などのチームと共に、私も経営について勉強しながら進めています。
──雑誌名は何でしょうか。
「nami」です。日本を連想させるものがよかったからです。ファッションもカルチャーも、ターンオーバーする、波のように繰り返す、という発想から決めました。ロゴも波をイメージしています。
フランスでは1950年代後半から60年代にかけて、若者たちが商業的ではなく自由に映画製作を行った「ヌーベルバーグ」の動きがありました。ヌーベルバーグとはフランス語で「新しい波」という意味。波というのは、本当に世の中を表す言葉ですね。
2021年に創刊予定の雑誌「nami」のイメージ
──ビジネスを始めるにあたって、影響を受けた人はいますか。高祖父である文豪、国木田独歩は女性誌『婦人画報』を創刊しましたね。
まず、私の曾祖母ですね。国木田独歩の娘にあたる人物です。彼女は私に「可能性」というものを教えてくれました。女性がビジネスをするのは難しく保守的な時代だったにもかかわらず、離婚後に自ら銀座でレストランのビジネスを始め、一人で世界を周りました。怖い目にあったでしょうし、侮辱され失敗もしたでしょう。その勇気と行動力をとても尊敬しています。
また、国木田独歩が自分を信じてチャレンジした勇気を尊敬しています。当時、彼の考えは世間になかなか理解されなかったのですが、そんな中でも「価値がある」と考えてやり遂げました。結局彼が亡くなってから、人々は「彼は正しかった」と気づきました。『婦人画報』はいまも存在します。コネクションやお金、名誉のために挑戦したのではありません。その領域に価値を感じて、最終的に彼の思いが詰まった雑誌を形にしました。
彼の小説をたまに読むと胸が痛みます。武蔵野の林間の美を描写した随筆『武蔵野』は、私の好きな作品ですが、一般的には評価されていませんでした。彼が生きている間に理解される機会がなかったのは悲しいですね。