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それでもジェナたちは諦めずに踊れる場所を探し、チャンスを見つけては仲間たちと一緒に踊り続けた。

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オンラインで事前に振り付けを教えることもできた。感染リスクを考えれば、むしろ少人数で撮影をしてオンライン配信限定という形にしてもよかったかもしれない。

「でもジェナは、その場で振り付けをするからこそ生まれる一体感、リアルな感動を伝えることにこだわり、情熱を注いだのです。なぜなら私たちブロードウェイの人間は、ストーリーテラーだから。人の心に触れる、そして人の心を動かすのが私たちの仕事だと、演劇学校や舞台の上で教えられてきました。

こういう時期だからこそ、衣装やメイクを奪われた俳優たちが、自分の『弱さ』や『脆さ』といった人間くさい部分をすべてさらけ出し、ゼロからつくり上げていく姿を見せることこそが、観る者の心を動かすに違いないと確信したのです」(由水さん)

人と人との生きた繋がりを重視したジェナ。舞台に関わってきた人間だからこそ、その重要性をよく理解していたのだろう。

バーチャルは確かに便利だが、アーティストと観客という相乗効果で生まれる生の感動には敵わない。

「五感を通して感じられる感動は、スクリーンを通した世界とは別格。今後どれだけオンライン化が急速に進んでも、エンターテインメントがオンラインでの動画配信に完全に切り替わることはありえない」(由水さん)

由水さんは断言する。ジェナも同じ考えで、踊ることができる場所を探して奔走したのだ。

コロナ以前は、歌やダンス、サックスやヴァイオリンなどのパフォーマンスが街中で繰り広げられているのがニューヨークの日常だった。人との交流を楽しみ、「密」な世界で生きてきたニューヨーカーたち。人との関わりを避けるような生活は、ストレスの溜まる日々であるに違いない。

踊りで市民を巻き込みながら直接的な感動をもたらそうとするジェナ。これが「我々の街にブロードウェイの活気は欠かせない!」と五感で感じてもらうための最適解だと考えたのだろう。

自分たちの存在を忘れさせないためにも、来年のブロードウェイが始まるまで、ジェナと仲間たちはこの野外公演を続けるつもりだ。

変わるブロードウェイ#3へ続く>

変わるブロードウェイ
#1 コロナ禍のブロードウェイ俳優たち。演劇で学んだ「選択する力」が糧に

#2 「生の感動」を届けたい。NYの振付家が始めた野外パフォーマンス

#3 ブロードウェイを忘れないで。舞台人がファンのために考えた「特別なこと」

#4 長期休演で課題が浮き彫りに。ブロードウェイが業界改革に乗り出した

聞き手・文=安積陽子 写真提供=Jena Van Elslander 編集=松崎美和子

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