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2020.11.19 14:30

アスリートの「やる気」も見える化。ツールで日本の競技力の底上げを


正しいデータを取得し、分析してみると、それまでは指導者の勘や経験に頼っていた部分を、数字が裏付けるケースが多いという。その先で目指すのは「勝つ以前に、大事な本番でベストパフォーマンスを発揮してもらうことです」と宮田は言う。ケガでの戦線離脱や調整不足による不完全燃焼を避けて、目指していた舞台で、最大の輝きを放つことだ。

ただ、このツールはトップアスリートだけのものではない。子どもたちにも使ってほしいと宮田は強調する。

「高校野球の選手で、自粛期間中に練習時間が減ったら球速が上がった、というニュースがありました。休めば、パフォーマンスが上がることが実証されたのです。子どもは、大人の“小さい版”ではありません。科学的な根拠に基づいた育成をしてほしい。それが、選手生命を長くし、一人ひとりを幸せにするはずです」

指導者やコーチ、マネジャーも、ワンタップスポーツを使うことで幸せに一歩近づく。指導者は、勘と経験に科学的なエビデンスを持つことができ、ときには新しい発見ができる。コーチやマネジャーは、選手に聞き取り調査をしたり紙でアンケートを採ったりして、その結果をデータ入力する手間が省ける。選手自身が“ワンタップ”で、スマホなどに入力するからだ。

「ワンタップスポーツはExcelのような、業務効率化ツールでもあるんです」

1年の延期が決まった大舞台に向けては“壮大なつくり直し”の真っ最中だ。

「選手は、ピーキングのやり直しを強いられています。トップアスリートになると、何月何日の午前・午後というレベルでピーキングができる。サポートしている19競技の日本代表チームでそれを実現し、しっかり結果を出してもらえるよう尽くします」

前出のブラインドサッカー男子日本代表は、2020年1月時点の世界ランキングは12位。東京大会が初出場ながら、狙うのはメダル獲得だ。高田監督は本気だ。

「もともと月に1度しか合宿ができず、そこでの密度を上げたいと思ってワンタップスポーツを導入しました。そうしなければ、いつも長時間練習している強豪国には到底、勝てないからです。来年は、16年のリオでベスト4だったチームに1つでも勝てば、メダルに手が届く。オフ・ザ・ピッチでここまでやっているのは日本だけという自負があります。あとは、一発勝負でどの国を刺すかです」

5年前、エディー・ジョーンズ率いるラグビー日本代表が、南アフリカ代表を相手に何をしたか覚えているはずだ。東京も、ジャイアントキリングのステージになる。


宮田誠◎商社、エネルギー関連会社を経て、ブリヂストンでマーケティング戦略・企画業務に従事。退職後、ルーツのある白馬村を中心に各地でスポーツの国際大会の主催・運営を手掛ける。2008年にユーフォリアを創業。

橋口寛◎メルセデスベンツ日本法人勤務後、米ダートマス大学でMBA取得。アクセンチュア戦略グループを経て、コンサルティング事務所を設立。2008年にユーフォリアを創業。慶應義塾大学大学院SDM研究科特任講師。

文=片瀬京子 写真=佐々木康

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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