アメリカの親が10歳まで読み聞かせを続けるわけ

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それに、子どもが長い物語を読むことができる年齢になれば、知識も思考力も表現力もだいぶ発達しているはずですから、「あなたが主人公だったらどうする?」「お母さん(お父さん)ならこう考えるけど、あなたは?」といった、「本人なりの考え方」に鋭く切り込むような問いかけがよりいっそう効いてきます。

1冊の本を親子で一緒に読むという経験を経て、子どもが読書家として独立したあと、「あの本、読んだ? どう思う?」と批評や感想を交換して楽しむ習慣へとつながっていけば、素敵なことだと思います。

ダイアロジック・リーディング4つの大原則


長くなるのでここでは紹介しませんが、ダイアロジック・リーディングにおける「対話」の基本的な流れは、「PEER(Prompt,Evaluate,Expand,Repeat)」と呼ばれるシーケンス(順序)に沿って行われます。しかし、「PEERシーケンス」はひとつの目安にすぎません。それを遵守することより重要なのは、以下の4つの大原則を守ることです。

1. 読み聞かせ時における発言の主導権を少しずつ子どもに譲ること
2. 発言したくなる雰囲気をつくるために、子どものことばをしっかり受け止めること
3. プラスアルファの情報をさりげなく足していくこと
4. 子どもが楽しむことを大前提に、「お勉強」の雰囲気を完全に消すこと

ダイアロジック・リーディングの特色は、子どもが語り部となり、大人が聞き手にまわることです。大人の役割は、子どもが本の読み方を学ぶ手助けとなるように、子どもとやりとりをすることにあります。

そして、読んでいる本について子どもが語れるように促すのです。

もちろん、いきなりはできないでしょうし、ことばを覚えることで精いっぱいの2〜3歳の子どもには難しいでしょう。4〜5歳の子どもでも要所要所で大人がさりげなく助け舟を出してあげることも必要になりますし、対話の流れもうまく大人がコントロールしないといけません。

しかし、普段の読み聞かせのときから対話の数を増やすことで物語の理解度を深め、表現力を高め、人に伝える訓練を重ねていけば、いずれは「このページでは何が起きているのかしら?」という問いかけに対して、子どもなりに頭を使って話せるようになるでしょう。

もしかしたら「子どもが語り部になれるわけがない」と思われるかもしれません。しかし、それはたんに「語り部になる訓練」を積ませていないだけなのではないでしょうか。

「本を読む能力」と「本の内容について語る能力」は別物であるという意識を持つことが重要です。

そのために、子どもの反応に応えて、子どものことばを言い換えたり、そこに情報を加えることで、子どもの語りを膨らませていきます。また、こうした大人とのやりとりによって、子どもが学んでいるかどうかを確認することも大切です。
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『思考力・読解力・伝える力が伸びる ハーバードで学んだ最高の読み聞かせ』(かんき出版)より

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