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Anuradha Varanasi is a freelance science writer.

Fachrul Reza / Barcroft Media via Getty Images

新型コロナウイルス対策として各国で推奨されているソーシャルディスタンシング(対人距離の確保)は、タイではデング熱患者の増加につながっているとみられることが、シンガポールの研究チームによる調査研究で明らかになった。在宅勤務への切り替えによって、ウイルスを媒介する蚊の生息場所が多い住宅地での生活時間が長くなっているためだという。

デング熱は治療法やワクチンがなく、デング出血熱などに進行すれば死にいたることもある。また、ウイルスには4種類の血清型が存在するため、4回発症する可能性がある。

世界100カ国以上で発生しており、最近は気候変動の影響もあってアジアや中南米の一部で脅威が増している。世界保健機関(WHO)によると、世界全体の感染者は2000年の50万5430人から2019年の420万人と、20年で8倍に増加。感染者の7割はアジアが占めるとみられている。

シンガポール国立大学などのチームは、新型コロナウイルス感染症の発生後、3カ月にわたって全面的なシャットダウン(外出規制)が敷かれたタイ、シンガポール、マレーシアのデング熱発生状況などを調べた。

その結果、タイでは、ソーシャルディスタンシングによって、デング熱患者が人口10万人あたり月に4.32人増えていると推定されることがわかった。バンコクでは月に170人、全国では2008人増えている計算になる。一方で、シンガポールとマレーシアでは有意な増加は確認されなかった。

タイでのデング熱患者の増加は、住宅地で過ごす時間が長くなり、以前よりもウイルスを媒介する蚊にさらされやすくなったことが主な原因とされている。住宅地は職場に比べ、配管の漏水やバスルームの排水、庭の植木鉢など、蚊の生育場所となる水たまりの原因となるものが多い。

研究チームは「人間の行動パターンの変化は、媒介性感染症の伝染パターンにも影響を及ぼす可能性がある」と指摘。ある場所での滞在時間が長くなると、媒介生物の密集度とは関係なく、媒介性感染症の伝染リスクが上昇することが判明したとしている。

研究成果は「PLOS Neglected Tropical Diseases」誌に発表された。

編集=江戸伸禎

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