中国で最も成功した「赤ワインの魂が宿った白ワイン」の実力

中国、寧夏に位置する「Chateau Changyu Moser XV(シャトー・チェンユー・モーザー15)」


ブドウの理想的な生育条件にモーザー氏は強い可能性を感じ、シャトー・ワイナリーの開発に協力した。投資額7000万ユーロ(約80億円)超、1500のバリックセラーと、瓶詰めラインなどのハイテク設備を備えたビザンチン様式のシャトーは、モーザー氏にちなんで「Chateau Changyu Moser XV(シャトー・チェンユー・モーザー15)」と名付けられた。

ワイナリーの設立後、チーフ・ワインメーカーに就任したモーザー氏は「ベスト・オブ・チャイナ」を目指し、中国ワインを世界に広めるべく、彼の中国ワインシリーズを誕生させた。このシリーズはヨーロッパ市場に進出した最初の中国シャトーワインとなり、すでに世界40カ国で販売されている。

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「Chateau Changyu Moser XV(シャトー・チェンユー・モーザー15)」のカベルネ・ソーヴィニヨン

中国人の心を表すカベルネ・ソーヴィニヨン


このシリーズの中で特筆すべきは、カベルネ・ソーヴィニヨンの「MOSER XV カベルネ・ソーヴィニヨン・ブラン・ド・ノワール」だ。

ヨーロッパの3つの主要なワインコンテスト「International Wine Challenge」「Sommelier Wine Awards」「Berliner Wine Trophy」で金メダルを獲得し、みごとに中国ワイン史上で最も成功したワインとなった。

100%赤の品種で造られた白ワインは、中国発の世界的イノベーションとして特にヨーロッパで絶賛されたが、実は中国でも非常に評判が良い。それは「赤ワインの魂が宿っているからだ」とモーザー氏はいう。

「中国の畑では、赤の品種が90%を占めています。中国で赤は権力を象徴する色です。そこで私は、赤ワインを飲む人が喜ぶ白ワインを造りたかったのです。酸味は少なく、苺、ライチ、桜の香りがたっぷりと感じられます」と解説する。

現在このワインの販売は年間6万本に限定され、更なる希少価値を生み出している。

ボルドーに対抗する中国のラグジュアリーワインの登場


今年は、最高級ワインのカベルネ・ソーヴィニヨンの新作「Purple air comes from the East」をリリースした。このエステートワインの2016年ヴィンテージはわずか6300本と非常に少量生産だ。

中国産ワインのラグジュアリークラスと言えば、シャトー・ラフィット・ロートシルトの「LONG DAI」や仏モエ・ヘネシーの「AoYun」だが、このような名門ワインにどう対抗するのだろうか。
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文=伊東エリーザ

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