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「獺祭 最高を超える山田錦2019年優勝米」(旭酒造株式会社)

「4万5000、4万8000、5万……はい、ほかにないですか? OK、Done(ハンマーの音)」

11月10日、旭酒造本社ビル12階の会議室は静かな緊張感に包まれていた。世界的なオークションハウス「サザビーズ」の1拠点である「香港サザビーズ」において、獺祭がオークションにかけられていたのだ。

旭酒造代表取締役会長の桜井博志氏、そして代表取締役社長の桜井一宏氏、そして社員らがオークションの模様をオンライン中継で見守った。

この日、出品されたのは、旭酒造による純米大吟醸酒「獺祭 最高を超える山田錦2019年優勝米」。酒の原料となる山田錦は、旭酒造が昨年企画したコンテスト「最高を超える山田錦プロジェクト」で、各地から集まった160名のエントリーの中からグランプリに選ばれたもの。1俵(60キロ)につき市価の約25倍にあたる50万円、50俵(3トン)が2500万円で旭酒造により買い取られていた。

そもそも旭酒造で使用するのは山田錦のみ。それも「二割三分」「三割九分」「四割五分」など米を50%以下に磨き込んだ純米大吟醸酒しか生産しない高級志向の酒蔵として、低迷する日本酒業界に新風を吹き込んだ、いわば日本酒界のゲームチェンジャーだ。

現在、市販されている旭酒造の日本酒では、山田錦を10数%まで磨いて仕込んだ「獺祭 磨き その先へ」(33000円)が最高級品だが、今回出品された「獺祭 最高を超える山田錦2019年優勝米」の精米歩合はそれ以上に磨き込んだものだという。

この「獺祭 最高を超える山田錦2019年優勝米」は4合瓶で23本つくられ、そのうちの6本が世界で初めて、日本酒としてオークションに出品されたというわけだ。一般的にオークションという言葉からイメージされるのはアートやジュエリー、そしてワインだろうか。

投資の世界ではSWAG(シルバー・ワイン・アート・ゴールド)という用語もあるように、エイジング(熟成)により価値を増すワインは、同じヴィンテージのワインが年々その数を減らしていく(飲まれていく)ことからも、価格を高騰させるのがユニークなポイント。金融や証券会社もワインを商品として取り扱っている。

一方で日本酒は、ワインのように長期熟成により付加価値を増すものではない。この「獺祭 最高を超える山田錦2019年優勝米」も、基本的には「マイナス5℃の環境下に置き、1年以内に飲んでほしい」(桜井一宏社長)という早飲みが推奨される商品である。

そんな日本酒が世界でどのような評価を受けるのか──というところで冒頭のシーンへ戻るというわけだ。

文=秋山 都

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