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VCのインサイト


キャピタルゲイン課税の引き上げ


スタートアップ界にとって最も重大な問題の1つとなり得るのが、キャピタルゲイン課税の引き上げの可能性です。キャピタルゲイン課税は資産の売却益にかけられる税金のことですが、これが引き上げられれば起業家や従業員、投資家など、スタートアップ界で株を所有する全ての人たちが影響を受けます。現在、米国のキャピタルゲイン課税は20%が上限で、所得税をはるかに下回る税率に抑えられています。

これに対して、バイデン氏は年収100万ドル(約1億円)超の納税者である場合に所得税率と同率をキャピタルゲインに課す法改正を提案しています。これが実現すれば実質2倍の税率になり、スタートアップ界に深刻な影響を及ぼすことになるでしょう。特にリスク評価面での影響が甚大です。スタートアップを成功させるのはとても難しく、心身ともに非常に多くの労力を要しますが、その多くが失敗に終わってしまいます。にもかかわらず起業家やその従業員、投資家たちがスタートアップの立ち上げに携わり、リスクを受け入れるのは、成功した暁に得られるであろう大きなリターンに期待しているからです。このインセンティブが減れば、今後はスタートアップ界に優秀な人材や豊富な投資資金が集まりにくくなる可能性も考えられます。

とはいえ、このような重要な税制はそう簡単に変えられるものではなく、様々な議論や承認の段階を踏む必要があります。まず、民主党が下院と上院の両方で過半数以上の議席を獲得することが1つの条件になります。そして、税制案を確実に通すなら、バイデン氏の主導で他の選挙公約よりも優先して取り組まなければなりません。

シリコンバレーに対して厳しい公約が多いようですが、実際はメディアや支持者の間で騒がれていたほどバイデン政権がテック界と対立するわけではなく、むしろ想像以上に寄り添った対応を取る可能性のほうが高いと考えられます。例えば、政治資金を調査する団体であるCenter for Responsive Politicsによると、バイデン氏の選挙キャンペーンへの寄付額ランキングでは、上位10位のうちGAFAとMicrosoftが半数を占めていました。また、バイデン氏の政権移行チームにFacebookの元副顧問弁護士やAppleの元政務関係担当ヴァイスプレジデントが任命され、Googleの元CEOであるEric Schmidt氏が新政権のテクノロジー業界対策チームへ任命される可能性も噂されるなど、テック界寄りの人事が進んでいます。なんらかの変革が進むことはほぼ確実ですが、シリコンバレーと新政権の密接な関係を考えると、選挙キャンペーン中に懸念されていたほどのマイナスインパクトにはならないかもしれません。

連載:VCのインサイト
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文=James Riney

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