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世界が直面する課題の解決方法


異業種が協働する「マルチステークホルダーアプローチ」を


昨年、ヘルシンキで開催されたシルバーエコノミーフォーラムのように、健康長寿の実現に向けた方向性や解決策を見つけるためには、異なる経歴や立場の専門家が、同じ目標に向かって協働するマルチステークホルダーアプローチが、アイデアと機会をもたらす意味で有効である。各国の産業界と医療界の伝統を対比してみると、それぞれの行動規範や、インセンティブ、協働のための機会といった点で多くの相違があり、協力を妨げる傾向にある。

例えば、社会保障システムや薬事規制は、一般的には、いわゆるアジャイル開発には向かない分野であろう。医師は、若いIT企業家よりも、大企業のMRとは気が合うが傾向にあるのではないか。高齢者向けの介護専門家は地域のボランティアを信頼する一方、外国企業と課題を共有する機会は多くない。こうした伝統的なネットワークを再考し、協働のための新しい機会を見つけるためにマルチステークホルダーアプローチが必要である。

世界経済フォーラムのGlobal Future Councilがマルチステークホルダーアプローチを採用していることは明らかだが、その他にも、健康長寿に向けて同様のアプローチを採用している例をみることができる。

日本、フィンランド、シンガポール、オランダ、中国といった国では経済官庁が保健省や伝統的な社会保障関係者と一体となって長寿課題に取り組んでいる。私の経験では、ロンドン、シンガポール、東京、イスラエル、ヘルシンキ、バンガロール、青島、カリフォルニア、ボストンや多くの地域で、ヘルスケアに関するスタートアップピッチや分野横断的なイノベーションイニシアティブが進んでいる。認知症や骨粗しょう症、働き方改革、長寿と金融といった点で、具体的なイニシアティブが世界大で進展している。

Global Coalition on Ageingは、健康長寿に向けて、異なる分野、規律、世代の者が協働している例である。Davos Alzheimer’s Collaborative(DAC)は認知症といった、特定の、しかし社会インパクトの大きい課題に焦点を当てている枠組みの例である。ヘルスケアイノベーションハブ(Innohub)は、分野や国境を超えて新たな協働を促すオープンプラットフォームの例である。

新型コロナウイルスの感染拡大により、デジタルヘルスや創造的な解決策を含むスマートなヘルスケアの重要性が再認識される中で、健康長寿の実現にむけて、より多くのマルチステークホルダーアプローチを活性化するべきである。


(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Kazumi Nishikawa, Director, Information Technology Industry Division, Ministry of Economy, Trade and Industry of Japan

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