ちょっと落ち着きませんか? キャンプブームと多忙な人に染みる言葉

コロナ禍では、ファニチャー関連のキャンプグッズが飛ぶように売れた。


製品のディティールにこだわる日本人


──日本の市場は、近年デザイン性に優れたものが求められています。アメリカで求められる商品との違いはどこにありますか?

大きく3つあります。ひとつは単純に気候や生活様式の違い。アメリカは寝袋のサイズが長いとか、日本は湿気や雨量も多いなど、必然的な仕様の違いですね。もうひとつは、デザイン性やミニマルさなどディティールに日本人はこだわる傾向がある。そしてアメリカは「価格」と「楽さ」が重要で使い倒す傾向があり、実用性にウェートがあります。明らかに方向性が違いますね。

──キャンプに対する気軽さが違うんでしょうね。そして、日本はジャンルを問わず製品のディティールにこだわる。

収納の仕方やサイズ、ほかのギアとのコンビネーションなど、日本人は細部にこだわりを見いだします。キリがないほどです(笑)。私たちもニーズは取り入れますが、アメリカらしさやコールマンらしさが消えないように考えますね。

恒例のキャンプイベントを開催した理由


──今年も、恒例の『The Coleman Camp』(2020年11月21日~23日)を開催されることが決まりました。キャンプは「3密」になりにくいとはいえ、リアルイベントを企業として開催するのは賛否、不安も大きいと思います。開催に至った経緯や思いを教えてください。

多くのキャンプファンから望まれている恒例のイベントですが、さすがに今年はいろいろと議論がありました。ただ、「やりたかった」という強い思いがすべてを前向きにさせました。

今年はできなかった、というのは簡単です。しかし議論の早い段階から、「できるためにはどうするか?」と意識が変わっていったのです。最後は、やっぱりやろう!という私たちの情熱ですよね。それと、この半年で新型コロナに対する「知見」が溜まったことも大きい。だからこそ「どうしたらできるか」という議論になったと思うんです。

2019年のキャンプの様子
2019年に妻恋で行われたColeman Camp 2019の様子

──最も気を付けているところはどこですか?

空間的な制限をどれだけ設けるかということですね。もちろんガイドラインは作成していますが、衛生面に関してはすでにどこのキャンプ場にも注意書きがありますし、キャンパーは皆さん意識が高いと信じていますのであまり心配していません。イベントのコンテンツやワークショップ、ライブなどは、打てる対策は万全を講じて実施します。

──お客さんにコロナ禍での開催をいかに意識をさせないか、本当の意味で、自然とのふれあいを楽しめるかを重視しているわけですね。

初心者の方も増えていますので、「グッドキャンパーの心得」というものも作成しました。ただ、誤解を恐れずに言えば、本心としてはキャンプ場に行ったら好きに楽しんで欲しいんです。毎日見えないストレスを抱えているわけですから。とはいえ、最低限他人に迷惑をかけないなど、そういう心得のようなものは、末長くキャンプを楽しんでいただくために必要だろうということです。

「変わること」より「変わらないこと」にも目を向けていきたい


──コロナ禍に収束の兆しはなく、また、ニューノーマルなど新しい発想で生活する時代になりましたが、キャンプが人気の理由をどう解釈されますか。

正直、わからないです。ただ、あまりにもみんなが「どう変わるべきか」を議論しすぎている気もします。それよりも、「変わらないこと」「変わるべきではないこと」にも目を向けていきたい。

キャンプの楽しみ方は人それぞれですが、キャンプの魅力は普遍ですよね。「友人や家族とキャンプに行ってリラックスしたい」、これは素朴な感情であり、ちょっと前までは当たり前のようにできたことです。コロナ禍に関係なく、社会は高速に複雑に動きながら流動化もしています。もちろん、ビジネスではそこを察知することも重要ですけどね。

──「変わらない人間はダメ」という情報が多いですよね。

人間の心の機微や変化に目を向けることを忘れて「変わらないといけない」とか「変わるべき」とかが目的の議論ばかりしている人には、コールマンの椅子を差し出して「ちょっと落ち着きませんか?」と言いたいですよ(笑)。

それよりも、地球環境の変化のほうが怖い。私たちは、これからもキャンプを楽しむことができる環境を守りながら、キャンプをすることで、皆さんが自然や時間の流れ、そういうことを考えるきっかけになればいいなと思っています。

文=富山 英三郎

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