ちょっと落ち着きませんか? キャンプブームと多忙な人に染みる言葉

コロナ禍では、ファニチャー関連のキャンプグッズが飛ぶように売れた。

コロナ禍で多くの業界が悲鳴を上げるなか、アウトドア・キャンプ業界はいち早く持ち直している。第一次キャンプブームと言われる90年代の頃とは違い、この10年でじっくりと堅調に成長してきた市場は、「3密回避」という観点で新たな層も流入した。その傾向は日本のみならず世界的な流れとなっており、ニューノーマル時代の大切な楽しみのひとつになっているようだ。

長らく日本のキャンプ市場を牽引してきたコールマン ジャパンは、現在のキャンプ人気をどう見ているか。代表である中里豊に話を聞いた。


自粛期間中もテントは売れていた


──コロナ禍の今年、多くの業界が厳しい状況におかれる中、アウトドア・キャンプ業界は堅調に見えます。

コロナ禍以前からマーケットは上向きでした。とくにここ4、5年はキャンプ市場の裾野が広がり、業界として着実に成長しています。とはいえ、春先の自粛期間は、店舗のみならずキャンプ場も閉鎖していたので、弊社も売り上げは昨年に比べれば厳しい状態でした。

──自粛期間中、キャンプギアをECで購入した人は多かったようですね。在宅勤務用の椅子やテーブルをキャンプ兼用とするなど新たな動きも多かったようですが、どのような傾向がありましたか。

自粛に合った独特の傾向が現在の売り上げの半分近くを補っている形でした。おっしゃる通り、ファニチャー関連は3月から5月にかけて需要が高まりました。また、通年で好調なのがテントで自粛期間中もテントは売れ続けていたんです。

一方、なぜか寝袋が売れなかった。私たちの経験則ではテントが売れたら寝袋も動くものなんです。おそらくですが、皆さん自粛しながらキャンプへの思いを馳せていたのではないでしょうか。まずは大きな買い物であるテントを購入され、楽しみにしているのかな、と。

コールマンジャパンの中里
中里豊 コールマン ジャパン アジアパシフィック・リージョン 代表取締役社長|「つい先週も友人とキャンプに行ってきました」長らく日本のキャンプ市場を牽引してきた彼は、季節を問わずプライベートでキャンプを楽しむ根っからのキャンパーだ。

──テントはどのサイズが売れたのでしょうか?

コールマンのメインターゲットはファミリー層なので、そこが販売面でもボリュームゾーンになります。加えて、ツーリングなどで使われるソロ用のテントがこの2年余りずっと売れ続けています。ソロキャンプ向けのギアはこの4、5年よく売れているのですが、とくにこの2年はほぼ毎月昨対比を上回っています。ですので、必ず、状況は好転すると考えていました。

──想定通り、自粛期間の解除後、いまや人気のキャンプ場では予約が取れないほどの人気です。

そうですね。キャンプ場が再開されてからは健常な市場に戻りました。皆さん自粛期間中にストレスを抱えられていたんだと思います。また、コロナ禍がなければキャンプに興味を示さなかったであろうライトユーザーなど広い層が来場されています。海外旅行には行けない、国内旅行も白い目で見られるという状況でしたから。8、9月の盛り上がりはバブルに近かったと思います。

特に新規参入者が増えていますね。キャンプギアも昨今はクールで多彩、そして値頃感も良いことから入りやすいのだと思います。さらに、ひとりあたりの年間キャンプ回数も増えています。日本のキャンプ人口は30代、40代のファミリー層がメインです。ここに10代や、シニア層が加わってくると、もっと強い市場になると考えています。ただ、これが何年継続するかは、これからの状況によるでしょう。

海外のアウトドア市場も同様に堅調


──キャンプの本場であるアメリカ、ヨーロッパ、アジアの動向はいかがでしょうか?

マクロでは世界的に同じ傾向にあって、アウトドア志向は非常に強いです。各国それぞれ空間の制限があるので、結果的にレジャーの選択肢はどこも似てきます。キャンプは家族で楽しめるので、コロナ禍において立派なオプションになっています。

──アメリカでは、キャンプ・アウトドア関連の需要が一時期落ち込みを見せながらも、ここ数年は日本と同じくじわじわと盛り上がりを見せていると聞いています。

まさにそうです。もともとアウトドア市場が大きいアメリカは、コロナ禍で一気に需要が増えました。日本と同様ですね。店頭ではアウトドア製品が無くなりつつあるようです。

コールマンUSAチームが言うには、これまで店舗から本社に「テント3000張り、チェア5万脚を」というオーダーのところ、最近はとにかく在庫の無いものが多いため、「何がある?」(なんでもいいから今何が手に入る?)と聞いてくる(笑)。そういう品薄な状況です。日本では、気候に合わせ最適化された日本企画の商品が7割ほどありますが、それでも需要に追いつくのは大変なほどですね。
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文=富山 英三郎

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