「定住こそリスクが高いから」バンライフを送る夫婦の八ヶ岳での試み

長く住居であり職場であったメルセデス・ベンツのバン。ポータブルの電源などを使いながら、完全オフグリッド化をジョニーさんは目指している。


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北杜市でも過去には台風による山腹崩壊などの自然災害があった。LAC八ヶ岳北杜では、有事のときでもシャワーが使えるなど、できるだけ困らない施設を目指す。

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LAC八ヶ岳北杜の館内にあるコワーキングラウンジ。

「その力はレジリエンスと言うんですが、ロンドンの大学で危機管理のマネジメントを学んだ際、教授たちは日本の防災システムについてベタ褒めしたんです。

ただシステムが優秀すぎるから個人のレジリエンスが弱い。ヨーロッパはその逆で、システムが弱いから個人の力を高める必要性が生じる。日本は自然災害が多い国。多くの人がレジリエンスを高められるサポートをしていきたいんです」。

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オフグリッド化されれば、施設は災害時にシェルターとなる。

防災と日常は結びつきづらい。そこをジョニーさん夫妻は結びつけようとしている。たとえば、有事に役立つポータブル電源をはじめ、オフグリッドでも使える最新で見た目も良いプロダクトやテクノロジーを普段から備え、軽やかに。

クリエイターが集まる、世界が注目する場所へ


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「あんなモノを作りたいな」といったアイデアをカタチに変える場がここにはある。人が集えばアイデアは磨きやすい。

そしてジョニーさんが最も注力していきたいのが“モノを作る場所としての環境づくり”だという。

「アーティスト・イン・レジデンスのメイカーズ版、メイカーズ・イン・レジデンスを作りたいんです。そのためにLAC八ヶ岳北杜を、CNCルーターをはじめとする先進的な設備を備えた住みながらモノを作れる場所とする。

そうすればデザインは自分で行い、工程はコンピューターに任せるという具合でモノ作りができて、グラフィックデザイナーで家具が作りたいといった人の夢も叶えられると思うんですよね」。

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撮影や配信に使えるスタジオも用意。フード撮影などのほか、ZOOMやYouTubeなどを使い、制作した映像コンテンツをここから発信できる。(c)Syuheiinoue

もちろん生産されたプロダクツが流通する仕組みも構築予定だという。まさにモノ作りしたい人にとってのパラダイスは、「未来は闇ばかり」と感じていたジョニーさんが想うLAC八ヶ岳北杜の未来像。そこには明るい光が煌々と差し込んでいる。

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この夏に仲間入りしたヤギのニーナちゃん。LAC八ヶ岳北杜のアイドルだ。

池田秀紀◎LAC八ヶ岳北杜プロデューサー。1980年、千葉県生まれ。大学卒業後、フリーランスのウェブデザイナーに。東日本大震災後に熊本へ移住。「物技交換」など震災後の暮らし方を発信する。帰京後、都市型バンライフをスタート。また妻・はる奈さんはカメラマン、スタイリストとしても活動中。

(この記事はOCEANS:連載「“職遊融合”時代のリアルライフ」より転載しています)

写真=奥はる奈 取材・文=小山内 隆

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