そのセックスは愛か、暴力か。動物性愛者「ズー」の主張、言葉なきものの想い

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新しい「性の公共」をつくるという理念の下、重度身体障がい者に対する射精介助サービス、風俗店で働く女性のための無料生活・法律相談事業「風テラス」など、社会的な切り口で現代の性問題の解決に取り組んでいる、一般社団法人ホワイトハンズ代表理事の坂爪真吾氏。

そんな坂爪氏が、馬や犬といった動物をパートナーとする動物性愛者「ズー」の主張を真摯に描いた『聖なるズー』集英社(濱野ちひろ著)から、彼らの主張や真の姿を読み解き、ズーの問題の本質、また、われわれが今後直面するであろう課題について語る。


オスは「男の子」、メスは「女の子」と呼ぶ風潮


私は仕事場で、2匹の爬虫類を飼っている。メキシコ原産の「ジャイアントマスクタートル」という長い名前のカメと、ペット用に海外で殖やされた品種である「スーパーマックスノーのヒョウモントカゲモドキ」という非常に長い名前のヤモリである。

それぞれの個体に、特に名前は付けていない。生き物には、学名・和名・英名・品種名が既についているので、それ以上名前を付ける必要はない。

子どもの頃から生き物好きだった私は、5歳の頃に地元の用水路で捕まえたクサガメを飼い始めて以来、様々な生き物を飼ってきた。

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1990年代後半以降、爬虫類がペットとしての市民権を得るようになってきた。それに伴って、爬虫類においても、犬や猫のように、オスの個体を「男の子」、メスの個体を「女の子」と呼ぶ風潮が出てきた。

私自身は、飼育動物としての爬虫類は愛玩動物ではなく観賞魚に近い存在だと思っているので、こうした風潮には正直抵抗を感じる。

意思疎通のできない生き物を、勝手に擬人化して愛情を注ぐことについては、いかなるきれいごとやお題目を唱えようとも、人間のエゴでしかない、と考えている。

一方、世の中には、擬人化による愛玩を通り越して、動物をセックスのパートナーにする「動物性愛者」と呼ばれる人たちがいる。

「動物性愛者」というと、自分の欲望のために動物を利用する、おぞましい存在というイメージがある。イメージ以前の問題として、「動物とのセックスなんて、考えたくもない」という人も多いだろう。

しかし、本書『聖なるズー』を読むと、そうしたイメージは全くの誤りであり、彼らが私たちと地続きの存在であることに気づくだろう。
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