ビジネス

2020.11.16

VTuberを文化に。いちから田角陸は「熱量」にこだわる #30UNDER30

いちから 代表取締役CEOの田角陸

次世代を担う「30才未満の30人」を選出する「30 UNDER 30 JAPAN」。今年の受賞者のひとり、現在24歳のいちから代表取締役CEO、田角陸は心と心をつなぐイベントの体験を提供する。



時は2017年。タレント業界において、テレビや映画などのオールドメディアだけではなく、YouTubeやSNSのニューメディアへと活躍の場を広げ、登録者数やフォロワーを獲得し存在感を強くする人物が増えていた。

「アニメ業界にも、YouTube配信の時代がやってくる」──そう確信した田角陸は、バーチャルYouTuber(VTuber)事業への参入を決め、「にじさんじ」を立ち上げた。

運営で重視したのは「コアなファンの心をつかむこと」。それにはファンの「熱量」=「共感・愛着・信頼」が必要だと考えた田角は“ライブ配信”という発想にたどり着く。「ライブ配信で同じ時間を過ごせたら、ファン同士も一緒に盛り上がれる」と。

昨年からは幕張メッセなどの大きな現実の会場でも頻繁にイベントを開催。「隣にも自分と同じように熱狂するファンがいることをいままでよりも強く感じられ、心と心をつなぐイベントの体験を提供できるようになった」。

「にじさんじ」のYouTubeチャンネル登録者数は、総数2000万を超えた。そのフィールドは日本にとどまらず、中国・韓国・インドネシアなど海外進出も開始。各地でコアなファンの心をつかみ続けている。

ファンの数を増やしていくなかで、田角は言う。「強引にファンを獲得すればコンテンツの消費が早くなる。持続的にファンの心をつかみ、長期で応援されるような『文化』にしたい」。ファンの熱量を受け止める田角の熱量もまた高く、今日も歩み続ける。


たずみ・りく◎いちから代表取締役CEO。1996年生まれ。早稲田大学在学中の2017年5月にいちからを設立。2018年に「月ノ美兎」らVTuberを擁する「にじさんじ」をスタートした。2019年にはVRサービス「ユメノグラフィア」を開始。

文=丹由美子 写真=木下智央

この記事は 「Forbes JAPAN No.076 2020年12月号(2020/10/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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