ポップな世界戦略車、日産キックスは市場をつかむ魅力があるのか?


もう一つ褒めたいのは、バッテリーを充電するためにエンジンが突然作動する回数が少なくなったことで、ノートより静かになり、エンジンがかかっても気にならない程度に収まっている。回生性能が使える「エコ」モードと、「スマート」モードで効くいわゆるワンペダル運転は少し慣れが必要だけど、一回慣れてしまえば、不思議な具合にアクセルだけで加速や減速ができる。

タイヤ部の回生エネルギーのイメージ

乗り心地は、一般道ではしなやかだけど、高速のつなぎ目やキャッツアイを踏むと振動がお尻に伝わる。低速ではステアリングは軽くて多少曖昧だけど、速度が上がれば上がるほど、手応えがついてくるし、路面からのフィードバックも増す。

標準装備として、日産の目玉技術のひとつ、「プロパイロット2.0」が付いている。これは進化版であり、さらに一歩自律自動運転に近づいている。条件が合えば、このシステムでは同一車線内での手放し運転も可能になるけど、ほとんどのユーザーは今までの普通の「先方車両に追従する」ACCしか使わないと思う。

先頭車両に追随するイメージ

室内は、このクラスではなかなかの出来と言って良いだろう。インパネのレイアウトはわかりやすいし、9インチのタッチスクリーンも使いやすい。もちろん、アップルのカープレーとアンドロイドオートにも対応している。ダッシュボードの半分のゲージはデジタルで残りの半分はアナログなので、結構ハイテクな感じがする。

内装の黒は確かに色としては締まりがいいけど、少し平凡だ。せっかくなら外観のポップな雰囲気に合わせて欲しかった。僕だったら、オプションの黒&タンの方を選ぶだろう。

キックス運転席

視認性は良いのに、リアドアの閉まる「パキーン」と言う音は品質感が少しチープだ。また、前席や後部席のヘッドルームは十分ながら、3人の大人が後部席に座ろうとすると、かなり密になってしまう。でも、ラゲージスペースもクラストップと言える。

こんなポップでチャーミングな外観で包まれたキックス。275万円からという価格は手頃だと言える。よりパワフルになったe-POWERのおかげで走りが楽しいし、燃費も文句なし。これからの日産の重要なスプリングボードとして、問題を抱えた同社にフレッシュな風を吹き込み、新しい時代へのキックオフになってくれるかな。

文=ピーター ライオン

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