「ネットで傷つく人を生まない方法」を伝える、グリーの垣根を越えて働く私の使命

小木曽 健




伝われば記憶に残り、心開く。ヒントは、創作落語にあり


専門の部署を立ち上げてからおよそ8年間、全国に出向いてきましたが、グリーが提供している講演は創作落語のようなものだと感じています。

「つまらなかったけど記憶に残る、役に立つ」講演はありえません。

私の仕事は伝えることですから、記憶に残って役に立つ講演をしなければならない。そのため伝え方には工夫を凝らしています。落語のオチにあたる「知ってほしい情報」と、そこに至るまでの筋書き、そしてそれを最も効果的に伝える例えやジェスチャー。ここが腕の見せどころです。

たとえば渋谷のスクランブル交差点、そのど真ん中で、個人情報が書かれたボードを掲げる人の写真を見せて、「これやれますか?」と聞く。

当然、やりたいと思う人はいないでしょう。ですが、ネットに投稿する行為はそれと同じ、あるいはそれ以上の行為だ、と説明すると、なるほどと頷いてくれる。

聞き手が耳をかたむけてくれた時はやりがいを感じますね。

工夫された伝え方をすれば、聞き手は納得し「役に立つ情報」が記憶に残る。講演後、周りの大人に言えない、実は大きな問題を内包した悩みをポロリと話してくれる生徒も珍しくないのですが、その背景には講演内容への納得感が欠かせません。

講演では「質問があればTwitterでダイレクトメッセージを下さい、答えますよ」と伝えているのですが、感謝のメッセージ以外に、学校の先生からの悩み相談が届くこともあります。中には警察と連携して事件を未然に防ぎ、犯人の検挙につながった相談もありました。

聞き手にとって私は「初対面の人物」。それでも助けを求めていい相手として悩みを打ち明けてくれる。心を開いてくれたように思えて嬉しいですし、それを実感できるのは何よりのやりがいですね。

日本を、世界でずば抜けて「情報リテラシー」の高い国へ


よく「ネットは犯罪の温床になっている」「リスクの高い場所だ」と言われます。

しかしインターネットは、あくまで情報通信のための道具でしかない。そこで有害な情報を発信し、特定の人物を誹謗中傷し、間違った使い方をしているのは人間です。

2020年5月のテラスハウスの一件では、リアリティショーの過剰な演出によって、制作側のコントロールの効かないバッシングが起きてしまった。海外でも同様の番組で自殺者が出ています。

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文=鈴木雅矩

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