「ネットで傷つく人を生まない方法」を伝える、グリーの垣根を越えて働く私の使命

小木曽 健




門外漢からネットパトロールの責任者へ


グリーに入社するまでは、いわゆる顧客対応、電話センターやメール問合せといった分野が専門でした。様々な業界のコールセンターで業務を設計し、立ち上げや運営を担当していたのです。

グリーに転職したのは2010年、まだSNSという言葉が世間に浸透しきっていない頃でした。

私は顧客管理部門の責任者として入社しましたが、当時のグリーは「お客様対応」と「パトロール」を顧客管理部門がまとめて運用していた。そのため入社と同時に門外漢のネットパトロール責任者としての業務も始まることになりました。

ネットパトロールの重要なミッションの一つは、サービスの「利用規約」に反する行為に、迅速に対処すること。もちろん違法薬物の取引や犯罪予告といった、法に触れる投稿への対処も含まれます。特に当時は、サービス内で18歳未満の児童が犯罪被害に遭うケースが多く、最優先で取り組む必要がありました。

グリーの“外”で活動する理由、「ネットトラブルはもっと減らせる」


ネットパトロールの部署では、児童被害を防ぐために様々な対策を施しました。暗号化された「連絡先」といった禁止投稿を抽出する機械学習システムは、早期に取り組んだ施策の一つです。

その一方で、禁止投稿との戦いはスピードとの戦いでもあります。違反ユーザーは、投稿が削除されないよう、日々新しい隠語やスラングを生み出すため、システムがそれらに迅速に対応できない場面もある。時にはスタッフの増員と目視による「人海戦術」で対処しました。

その結果、最初の1年でグリーにおける被害児童数を激減できたことは、チームとしての素晴らしい結果だと思います。しかし業界全体で見ると根本的な解決にはなっていなかった。

違反行為を行なうような人物は、管理の厳しいサービスから逃れ、別のサービスに移動してしまうので、結果的に業界全体の被害者数は減らなかったのです。

個々のサービスでセキュリティ対策を徹底しても、違反ユーザーは河岸を変え、また同じことを繰り返す。問題を根本的に解決するためには、自社サービスの外側にいるネットユーザーにも、ネットリテラシーを身につけてもらわなければいけませんでした。

そこで「社外向けの情報リテラシー教育」を専門に行う部署を立ち上げ、講演活動がスタートしたのです。

全国の学校を中心に次第に口コミで評判が広がり、日に日に増えていく講座の回数。以来、40万人以上の方々に「ネットで絶対に失敗しない方法」をお伝えしてきました。

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文=鈴木雅矩

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