英語を諦めたら、米アマゾン本社で年間MVPをもらえた話

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2020年2月より米アマゾン本社で働き始めて、早いもので10ヶ月が経ちました。大学院留学や米国企業での勤務期間を通算すると、かれこれ8年ほどアメリカで暮らしています。

8年間というと決して短くない期間ですが、実のところ、理想とする英語力が伴わないことにずっとコンプレックスを感じてきました。

しかし、2020年6月に米アマゾン本社にて数百人規模の屈強なビジネス戦士たちのなかで、図らずも年間MVPを受賞しました。今振り返ると、英語にコンプレックスを感じるなかでMVPを受賞できたのは、「英語を諦めたから」だと感じています。つまり、自分の弱点を受け入れたことで肩の力が抜け、自然体で振る舞えるようになったことが大きく寄与していると思うのです。

そこで今回は、私の経験をもとに、できないことや苦手なこととの向き合い方や思考の転換法をお伝えします。

「できない」を前提にする


これまでを振り返ると、英語が話せるようになりたい一心で、時間を見つけては発音教室に通い、通勤時間には英単語を聞き、家では海外ドラマを見るなど、それなりに努力を続けてきました。しかし、不要な見栄やプライドが邪魔をして、日々の生活では空回りを続けていたように思います。

転機となったのは、現職へ着任してすぐの頃。コロナの影響で、完全リモートワークへ強制的に切り替えなくてはいけなくなりました。

私が所属するスポーツ事業部では、主にフィットネスなどスポーツ用品を取り扱っています。アメリカの消費者にニーズのある商品を、アマゾン上で簡単かつ手頃な価格でお求めいただけるよう、メーカー各社と取引するのが私の仕事です。

市場はアメリカなので、当然、消費者、取引先メーカー、社内スタッフとのコミュニケーションは英語で行います。

もともと英語のコミュニケーションに課題があるなかで、物理的に離れていながら、かつ顔が見えにくい状況におかれ、一からコミュニケーションや仕事の進め方を見直さざるをえなくなりました。「できない」を前提とした思考や行動に切り替えたのです。

まず、“Concise(簡潔さ)であること”を意識して、使う単語を制限し、複雑な文法は使わずに、短いセンテンスで話すようにしました。同じ時間にネイティブが話す量のおそらく3分の1程度しか話していませんが、その分、余計な飾り付けがなくなり、端的に本質を伝えられるようになりました。

また、ミーティングでは事前準備と事後のフォローアップに力を入れ、大人数で行うオンラインミーティングの最中には積極的にチャットボックスを活用しました。英語を使ってオンライン上で即興で議論するよりも、事前に調べたり意見をまとめたりして、自分に適した手段(私の場合は、書くことと読むこと)で伝える方が意見の量も質も上がるからです。

スタッフ間のやりとりにおいても、メールなどの読み書きを中心にし、電話のような音声のみのコミュニケーションだと正しく伝えられるか不安なので、できるだけ顔が見えるビデオ会議を使っています。今は便利なツールが数多くあるので、それらを工夫しながら活用することで、十分成果に繋がると実感しています。
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文=伊藤みさき 構成=竹崎孝二

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