英語を諦めたら、米アマゾン本社で年間MVPをもらえた話

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その他、私がもっとも苦労している「発音」は、完璧を潔く諦めたもののひとつです。発音が難しい単語は、無理に伝えようとせず、積極的に別の単語に言い換えるようにしています。

たとえば、身近な日常シーンでは、カフェやレストランで水を注文するときに ”Water” がなかなか通じないので、 “Aqua”(アクア、ラテン語で水)という単語を使っています。ラテン系移民も多いため、問題なく通じます。

ビジネスシーンでは、”Pitch” や “Deck” など、発音によって不適切な誤解を与える可能性があるものは、それぞれ ”Presentation” や “Slide” と言うようにし、不要な心配は事前に取り除くよう心がけています。

ネイティブが普通に使う表現を使えない悔しさもありますが、できないことはできないと割り切ることで、表現方法に迷うことなく「何を伝えたいか」に集中することができるので、パフォーマンスはむしろ向上しました。英語はあくまで手段であると意識しています。

現状を受け入れ、宣言する


英語ができない自分を受け入れたこと、それはつまり、「諦めた」とも言えるでしょう。私自身、受け入れて諦めるまでに10年近い時間を要しました。できないことを認めるのは、簡単なことではありません。

これまでに費やしてきた時間を考えたり、流暢に英語を使っている周りの日本人を見たりしていると、どうしても受け入れることにストップをかけてしまいます。

では、どうすれば受け入れることができるのでしょうか。

私の場合、「現状を受け入れる」と決めてから、まずは積極的に周囲に宣言することから始めました。ネイティブでないので自分の英語力が十分でないという自覚があること、言語や文化のバックグラウンドが日本にあることを伝え、「言語や文化の違いで誤解を招くことがあるかもしれないけど、気になることがあれば遠慮なく聞いてくださいね!」と宣言したのです。

思い切って正直に伝えたことで、自分の気持ちも楽になりました。それだけでなく、周囲の受け止め方や対応も変わり、「こういう表現の方が良いよ」と教えてくれたり「それはこういうことを言っているの?」と確認してくれたりすることが増えるという効果もありました。

そのおかげで、同僚とのコミュニケーションが円滑になり、より他部署との連携がとれるようになりました。自信をもって主体的にオーナーシップをとれるようになったことも、大きなメリットのひとつです。

「私、これが苦手なので教えてください」と、等身大の自分で宣言することは、現状を受け入れるのに有効なステップだと思います。
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文=伊藤みさき 構成=竹崎孝二

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