そんな可愛らしいプロフィールで知られ、世界から長らく愛されてきた日本のキャラクターの代表格のハローキティが、最近、意外な分野で活躍している。ズバリ、世界の社会貢献分野だ。
2018年からYouTubeチャンネル「HELLO KITTY CHANNEL(ハローキティチャンネル)」を開設すると、多様なコンテンツとともに、SDGsについて発信を始めた。その熱意が伝わり、2019年から国連本部と協働して「#HelloGlobalGoals」というプロジェクトを日本語と英語で展開している。タイの島で海の豊かさを学んだり、ヨルダンの難民キャンプを訪問したり。ハローキティが学びながら、率直な思いをズバズバと語る、親しみやすい動画が話題になっている。
いまやハローキティチャンネルの登録者数は26万6000人に及ぶ。その活躍を裏で支えるサンリオマーケティング本部CMOの木村真琴に、ハローキティがYouTubeデビューした真意とキャラクター戦略について聞いた。
YouTuberハローキティ、誕生秘話
木村は2018年にサンリオに入社。もともとはP&G、ソニーマーケティング、INGダイレクト、ウォルマートジャパンなどで20年以上の経験をもつ、マーケティングのプロだ。これまでサンリオのキャラクターたちとは全くと言っていいほど関わりのない人生だった。
そんな木村が、サンリオに入社し、新設されたばかりのマーケティング本部で最初に手がけたのは、キャラクターの「提供価値」を考え直すことだった。
かわいくて癒されるキャラクターたちは、それぞれ今後どのような所で活躍していくべきなのか、彼らはファンに何を提供できるのか。突き詰めて考えていくと、ハローキティはサンリオを代表する「思いやり」の提供者だった。
「キャラクターを芸能人だとするならば、キティは46年活動しており、信頼も認知もあります。サンリオのキャラクターは『かわいい、仲良し、思いやり』を大切にしていますが、キティはどのキャラクターよりも『思いやりの体現者』を担っています」
思いやりの心を人々に届ける上で、彼女自身の媒体が必要だと感じた木村は、2018年にハローキティ公式チャンネルを開設した。
サンリオマーケティング本部CMO 木村真琴
ところで、ハローキティの声を聞いたことがあるだろうか。アニメのキャラクターではない彼女が言葉を発しているところを見たことがある人は、あまり多くないのではないかもしれない。
ところが、YouTuberのハローキティはよく喋り、穏やかな顔のイメージからは意外なまでに表情も豊かだ。また、動画を見ていると彼女がかなりさっぱりとした、あっけらかんとした性格であることにも驚く。このことについて尋ねると、木村は「素のキティって、あんな感じですよ」と笑った。
「YouTubeの中のキティはとてもよく自分のことを話します。自分の言葉で話し、自分のやりたいことをやる。これは46年のキティの歴史の中で初めてで、とてもいまっぽいことだと感じます。でもサンリオピューロランドのショーなどを見ていると、意外とキティはみんなを導いていく存在。これまであまり機会がなかっただけで、喋ったり、意見をもっているのが普通ですよね。むしろキャラクターに人格が伴っていることが重要だと思います」