一方で、同じく出版業界で働く30代のA.H.氏は、こう話す。
「ネットメディア系の職場で初めて『自炊』をする光景を見たとき、『プロってすごい、こういう風に書籍から情報を吸い上げて利用するんだ』と感激しました」
大学で著作権などの法律について学びながら、国立美術館で学芸員補として働く20代前半のN.M.氏は、
「最新のスキャナーのような便利なツールは、今後もますます増えていくと思う。私はよく、自分で描いたイラストをネットに載せることがあるが、作品の上にペンネームを重ねて書くことで、無断使用を防いでいる。急速に発展するデジタル社会で、きちんとした法律が作られるまで待っていることはできない。自分の作品を守るために、著者側が何か対策を講じなければならないのは、いかがなものか」と疑問を呈す。
こうして話を聞いてみると、「自炊」は「著作権」という繊細な問題がかかわる内容であり、意見はやはり千差万別のようだ。出版業界に携わる人でも、感じ方がまったく異なっていたり、若い世代でも、高精度スキャナーのような便利なツールの普及に懸念を抱く人もいた。
新世代スキャナーの登場で、われわれは「自炊」についてもう一度議論を行わなければならない時がきたのかもしれない。
ともあれ、自宅の本を自炊し、自分や家族などのために使用する分には何の問題もない。年末年始、本棚の整理をする際には、最新の高性能スキャナーがうってつけのツールであることは間違いないだろう。