──「D2F(Direct to Fan)」の仕組みづくりは、これからのチケット市場にどのような変化をもたらすでしょうか?
これからの時代は、デジタルマーケティングのためのユーザーデータがすごく大切になってくると考えています。アーティスト自身が、そのデータを使って、さらなるビジネスを展開することが当たり前になるでしょう。
ZAIKOでは、直接ファンにチケット販売できるため、CRMツールを通して購買層のデータを見ることができます。それを分析すれば、自分たちのオーディエンスの特性がわかる。それを生かして新しい企画を立てたり、グッズを販売したり、アーティスト自身がしっかりマネタイズし収益化できる方法を考えることが可能になるでしょう。
レコード会社がデータを持っている場合もありますが、私の経験からすると、そのデータをアーティストに直接見せることはしない場合が多いと思います。情報共有しないほうが、会社側がアーティストに対して立場を強く保てることも考えられます。
しかしこれからは、インターネットによってそれが許されなくなる時代になるでしょう。情報の透明性を求めるアーティストやクリエイターがスタンダードになるはずです。
先日、ミュージシャンのカニエ・ウエストが、レコード会社との契約内容をツイッターで公開しましたよね。これは極端な例かもしれませんが、これからは、情報を隠したままアーティストが不利になるような売り方をすることはますます難しくなってくるのではないでしょうか。
ZAIKOは、「自由」と「透明性」を求めるアーティストから信用してもらえるツールでありたいと考えています。これからもアーティスト・ファーストを実現する機能をさらに充実させていく予定です。
アーティスト・ファーストを実現する機能を続々生み出している。
──レコード会社の役割も変わっていきそうですね。
音楽業界もアーティストのマインドも、すごいスピードで変わり始めているし、この変化はこれからますます加速すると私は考えています。
⾳楽業界では、⼤⼿会社がアーティストから「権利」を譲渡されることで、コンテンツを利⽤・マネタイズする権利を得てきました。今まではそれでビジネスが成り⽴っていましたが、これからはアーティストが⾃分でつくったものの権利を⼤⼿に譲渡せずに、⼀部の売り上げだけを渡すことができるようになるのではないかと思います。
そして、音楽に限らず、いつでも人々の体験を大きく変えるのは、業界のど真ん中にいる既存の大企業ではないんですよね。映画や音楽の楽しみ方に革命を起こしたのはNetflixやSpotifyであって、ハリウッドでもなければ大きなレコード会社でもない。スタートアップ企業が変えたわけです。
IPをたくさんもっている側は、それを守らなければいけないという力のほうが大きくなってしまって、実験的な新しいビジネスモデルを生み出すことがなかなか難しいのかもしれません。挑戦できるリソースはたくさんあるはずなのに、動けなくなってしまう。
だからこそ、小さいスタートアップである私たちZAIKOが、勇気を出して、今までなかったようなものをスピーディにつくらないと! 早く走ることが私たちの役割。エンタメ業界の将来を担うであろうサービスを今つくっているんだと思っています。