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ちなみにこのスケッチにおいて特に大事だったのが、インターフェイスのデザイン、つまり画面の仮デザインを見せ、情報との接し方や使い方を想像してもらいながら議論することだった。人がいつどのように、何の用途でそのソリューションを使いたいかによって、インターフェイスがどう設計されるべきかは大きく変わり、アルゴリズムやデータの設計もその影響を受ける。

手書きだからこそ素早く複数のデザインを試せるため、「せっかく高度な技術を使って、多大なコストをかけて優れたアルゴリズムを開発したのに何にも使われなかった」というような悲劇を避けやすくなる。


インターフェイスデザインもスケッチに起こすことで、コーディングに関する課題を迅速に見つけられる (c) IDEO Tokyo

組織全体が「失敗」を許容する


AIに関する世論の多くは、IT大手の膨大なデータと、画期的な技術を開発しているエリート研究者たちに焦点を当てている。そのようなものが見出しを飾るので、イノベーティブな製品を作ろうとしている企業が、そこから始める必要があると考えるのも無理はない。

しかし、データサイエンスの問題の核心は、正しい問題を解決しているかどうかを検証することだ。そのためには、人間を中心とした反復的なアプローチが必要だ。

キャシーの例でも、最終的なソリューションはデータと高度なアルゴリズムをうまく活用したものになったが、最初はユーザーの視点に立った多くのアイデアのスケッチから始まった。

この人間中心のアプローチを繰り返しながらアイデアの精度を上げていくプロセスには、人に見せるには恥ずかしいくらいのクオリティのプロトタイプを躊躇せず人に見せ、フィードバックを得て、検証を重ねる作業が求められる。チームは、時にはあえて未完成の仕事を世に出し、失敗したとしてもその事実を受け入れて、そこから学び取るしぶとさを持つ必要がある。


(c) IDEO Tokyo

プロトタイプの目的は、テクノロジーやビジネスの検証などを含むが、もっとも重要なのは、人々から学ぶことである。人々があなたのプロトタイプに全く興味を示さなかったり、理解ができなかったりしても、それは良いフィードバックと捉えるべきだ。なぜなら、そのプロトタイプが解こうとしていた問題は解くべき問題でなかったか、または解き方が悪かったということに気づかせてくれるのだから。

そして、この「失敗を許容し、前向きに捉える」マインドセットは、組織全体がその重要性を理解している必要がある。チームが恐れることなく失敗し、学び、反復することができるように、周囲のすべての人がこれを認めて、チームの「心理的安全性」を守ることが不可欠だ。

データ、そしてデータを活用するためのさまざまな技術は、紛れもなく企業の競争優位性にプラスに働くものだろう。しかし、それらの扱い方、向き合い方に関しては、未だ多くの人が模索中の段階だ。本稿で紹介したプロセスとマインドセットが、何らかのインスピレーションとなることを願っている。

文=越島健介&ジョー・ガンビーノ(IDEO Tokyo データサイエンティスト)

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