バーガーキングは2019年4月、ニュージーランドで公開していた広告動画を取り下げました。ニュージーランドから11000キロ離れた国の消費者から反感を買ったことがその理由でした。
動画には、客が箸を使ってハンバーガーを食べようとする様子が描かれており、その描写に対し中国で激しい抗議の声が上がったのです。また、モデルが箸でピザとスパゲティを食べようとする広告動画を昨年公開したドルチェ&ガッバーナも、同じように中国の消費者から厳しい非難を受け、中国では商品の不買運動が広がりました。
これらの事例は、中国人消費者の嗜好や考え方を理解し、また敏感に感じ取ることの重要性を示しただけではなく、それらを間違って捉えた場合、ブランドは、グローバルに甚大な影響を受けることも示しています。
いまの時代、企業はこれまで成功してきたブランド戦略、マーケティングの仕掛け、有名人によるお墨付きなどから離れて、全く違った視点に立つことが求められます。
中国の消費者がますます洗練されてきており、企業は自らの存在意義と市場シェアを確立するために、中国市場の傾向をしっかりと把握する努力が求められているのです。さらには、中国以外の国でのマーケティング戦略が、中国における自らのブランドイメージが与える影響についても意識する必要があります。
透明性の高さが「ブランドロイヤルティー」に繋がる
中国の飲料メーカーであるノン・フー・スプリング(Nong Fu Spring)は、企業としての信頼を確立し、ブランドロイヤルティー(ブランド信仰)を高めるために行動研究を効果的に活用しています。2016年、同社は「17.5° デジタル追跡が可能なオレンジ(digitally traceable orange)」と名付けたオレンジを発売しました。このオレンジは、購入した人がQRコードをスキャンすると、産地、育て方、成長の過程、品質に関する詳細などについて知ることができるようになっています。
このオレンジは中国の電子商取引市場で高級品として販売されており、実際、同じ地域で栽培される同様のオレンジの2倍の値段が付けられています。
値段が高価であるにもかかわらず、なぜ17.5°オレンジがよく売れているのでしょうか。行動研究によると、17.5°オレンジに対する消費者の信頼を高めた理由として、以下のことが挙げられます。
(1)消費者の判断を助けるベンチマークを設ける
甘さの感じ方は人によって違います。甘さを測る業界基準を採用したことにより(この場合は17.5%)、消費者は自分が好きなオレンジの甘さを客観的に測れるベンチマーク(基準)を認識できるようになりました。
(2)テクノロジーによる透明性の向上が、消費者の信頼とブランドロイヤルティーを高める
QRコードをスキャンした消費者は17.5°ブランドに対し、さらに好印象を持つようになりました。オレンジを育てる過程、産地、さらには栽培を管理する責任者の名前までもオープンにすることで、企業は透明性と説明責任に最大限取り組んでいることが消費者に伝わります。
商品に関する情報を簡単に入手できるようにすることは、企業と消費者の間の信頼関係を維持することにつながります。