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REMSLILA(レムズリラ)代表 船ヶ山 哲

サラリーマン、終身雇用、退職金、年金という制度の危うさを感じる昨今、「子どもを起業家に育てよう」と謳う書籍が注目を集めている。マーケティング・コンサルタントとして活躍する著者が、いま次世代に提示する道標とは。


現在は海外を拠点にマーケティング・コンサルティングのビジネスを展開する船ヶ山哲。7年前、彼は10年勤め上げた会社を辞め起業へと踏み切った。起業当時のことを尋ねると「子どものために起業したいと思ったんです」と語る。しかし、彼は過去に一度副業を失敗し、うつ病、通院という手痛い経験をしていた。

「再挑戦した副業も徐々に成果を出せるようになってきたので、もっと挑戦したいと思う一方、どうしても失敗の恐怖が拭えず、あと一歩が踏み出せませんでした」そうして勤続10年目を迎えようとしていた9年目のこと、知人の起業家に「起業するにはどうすればいいでしょう」と相談。そこで言い放たれたのは「Xデーを決めろ」、ただそれだけだった。

「会社を起こすならこういう準備をしたほうがいいよ、というアドバイスをされるかと想定していたのですが、『最後の日を決めて、飛び出す勇気をもて』それだけでした。何にしても、先にゴールを決めないと始まらないと。そこで勤続10年目を目標として、起業の準備を進めていきました」

一念発起した船ヶ山は、独立後フリーランスとして活動するも「名刺交換で、負けたんですよ」と振り返る。相手の名刺に書かれた出版書籍を見て「独立しただけでは駄目だ。書籍出版経験があるコンサルタントになろう」という新たな目標をもち、その後達成。しかし「また負けました。“書籍ランキング1位”と書かれた名刺に出合っちゃって」と苦笑いを交えながら振り返った。

彼の一歩は、いつも「負けた」からの出発。その都度、分析と試行錯誤を繰り返している。その後、見事「書籍ランキング1位」を獲得した。

「負け続けたくないんです。勝ちたいから、勝つために有り金すべて投入して、それでも駄目だったらやめよう、と。『負けたくないから』と何もしないで過ごすより、起業のときに言われたようにXデーを決めて実践する。これはいまでも私の中に続く理念だと思います」


「子どものために企業を決意した」と語る船ヶ山

「比較されないビジネス」で勝ちにいく


船ヶ山の事業は、一人でビジネスを行いながら、初年度3,000万円から始まり、1億円、3億円、9億円と順調に業績を伸ばしていった。その成長力に圧倒されながら、いかなるビジネスなのかを尋ねると「独自性は、特に設けていません」と、意外な返事が。「他者との違いを出し、比較されている時点で負けビジネス」が彼のモットーなのだ。

「マーケティングを行う際、商品や手段にフォーカスすると他社と比較されてしまいます。重要なのは、商品ではなくお客様の願望や悩みに基づくこと。願望や悩みはお客様によって異なりますから、そこへフォーカスすることで比較されないモデルが出来上がります。そうして顧客からの信頼を勝ち取ることができれば、極論“何でも売れる”ようになります」

また、顧客から潜在的な願望が引き出せるようになると、新たな願望を意識させることができる。そこを目指してコンセンサスを取ることが、船ヶ山のゴールだ。ここまでの信頼を勝ち得るため、彼は顧客の願望や悩みを聞き出す際の注意を挙げた。「必ず『お金を払う人』の意見だけを聞いてください。お金を払わない人は顧客ではありませんし、顧客ではない人の意見を取り入れると的確なアプローチができません。このルールは、あらゆるビジネス分野で言えることではないでしょうか」

与えるのは「教え」ではなく「選択肢」


ビジネスに対して一貫したルールと哲学をもち、ストイックに実践していく。そんな彼が、なぜ子どもの教育本を著したのか。船ヶ山は育児に対しても「子どもに、うちはお金持ちなんだという記憶を残してあげたい」「長男が3歳になるときまでに、お金持ちになっておきたい」という“ゴール”を設けていた。現在船ヶ山の息子は10歳になり、親から少しずつ離れていく年齢。そんなとき、船ヶ山が子どもに対し抱いたゴールは「たくさんの経験をさせて、選択肢を用意する」ことだった。

「日本の若者たちはどういうわけか年収1,000万円を目標にしてそこに人生をかけてしまう。でも、子どもたちの可能性はそんなものではありません。起業家になることが絶対の正解ではありませんが、少なくとも子どもには『こんな選択肢もある』と伝えたいのです」

一方で彼はいま、子どもたちが生きていく日本の未来を憂えている。「日本では、就職=自立と思われがちですが、日本のサラリーマンは世界的な意味での“自立”とは程遠い。日本は自立の定義が低すぎる」と厳しく指摘する。そんな時代に彼が子どもに渡したいギフトは「選択肢」だった。これもまた彼のビジネスルールのひとつである。

「優秀なマーケターは、こうしましょう、ああしましょうと教えたり指示したりしません。彼らは、『自らカッコいい背中を見せ、憧れを通じて、まねたいと思わせる』ことに集中する。これが結果、クライアントが間違った方向へ行かない選択肢の示し方となります。教育も同じで、大事なのは『教える』ではなく『見せる』です。私はいま自分の背中を子どもたちに見せながら、サラリーマンだけではない、世界で生きていくための選択肢を与えたいのです」

あらゆる社会システムが変化していくいま、この書籍には社会や組織に頼らずに生きていくためのアイデアが詰まっている。直感やセンスの磨き方、マーケティングの思考方法、ビジネスチャンスの生み出し方―義務教育でビジネスを学ぶことができなかった私たちにハッと気づきを与える、帝王学ともいえる一冊。子どもをもたない人も、人生の新たな選択肢を得る一助となるだろう。


船ヶ山 哲(ふながやま・てつ)◎心理を活用したマーケティングを得意とし、人脈なし、コネなし、実績なしから、起業5年で1,000社以上の顧客を獲得。数々のメディアに取り上げられ、テレビ神奈川&FMヨコハマで行うビジネス番組のパーソナリティとしても活躍中の起業家。

 
船ヶ山の著書『10歳から始める! 起業家になるための「7つのレッスン」』(辰巳出版)は子育て世代以外にも幅広い読者を獲得している。


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Promoted by REMSLILA / text by Nanae Ito / photograph by Toru Hiraiwa

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