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2020.11.10

ウーバーの「非正社員」継続は運転手をハッピーにするのか?

Mario Tama / by Getty Images


ウーバーは、運転手に料金を設定させることも可能だ。ウーバーXやリフトよりも前に存在した配車アプリの先駆者「サイドカー(Sidecar)」では、運転手は料金を設定し、運転する方角も自由に決めることができた。乗客は行き先を伝え、希望する料金を提示した運転手を選び、承認されるのを待つ。サイドカーは、ウーバーとの競争に敗れて撤退したが、その事業モデルは、運転手を独立契約者として扱う上で参考になる。

「正社員化」のマイナス面


ギグワーカーの正社員化は、運転手にとっていくらかメリットがあるが、その他の関係者にとっては柔軟性がなくなるなど、マイナス面の方が大きい。運転手は待機時間中も給与が支払われる上、車両費用も補償される。その一方で、サージレートなどのインセンティブは失われる。

また、会社を通じて健康保険に加入できるが、オバマケアを使えば多少保険料は高くなっても自分自身で購入することが可能だ。税金は自営業税を支払うのではなく、給与から源泉徴収されるようになる。柔軟な働き方を希望する運転手にとっては、正社員化はデメリットが大きい。独立契約者であれば、好きな時間に働ける。

筆者の知人は、スタートアップの創業者だが、空き時間を使ってウーバーの運転手をしている。彼は、会社の経営に費やす時間と、ウーバーの運転手として稼ぐ時間を自由に分配している。

ドライバーが支払うコスト


調査によっては、ウーバーの運転手の手取り報酬額が最低賃金を下回っているというものもあれば、上回っているというものもある。燃料代や修理費、減価償却費、タイヤ代など、走行距離に応じて増えるコストがある一方で、走行距離に関わらず年間で発生するコストもある。保険費用は、一般的に距離に応じて増加するが、配車アプリ会社が業務中の保険を提供している。

多くの運転手は、燃料代がコストの大部分を占めると考え、減価償却費やメンテナンス費用を考慮していない。報酬からこれらのコストを差し引いていないため、実際の金額以上に稼いでいると勘違いしている運転手が少なくないのも現実だ。

正社員にした場合、会社側が車両費用を全額支払うべきか(通常は、新車の場合で1マイル当たり50セントで、中古車の場合はそれよりも少ない)、追加で発生した費用だけを支払うべきかなど、検討することは多い。また、ギグワーク専用に車をリースした場合には、補償費を高くするべきか考える必要もある。

ウーバーは、これらの面倒事を避けるために代替案としてプロポジション22を提案した。この代替案には、多く運転する運転手に健康保険を提供するといった内容を含む一方で、解雇された際の権利など、法律が定めるベネフィットは含まれていない。プロポジション22は州法に制定される見通しだが、本来はギグワーカーと雇用主が協力して新たなルールを検討し、試験導入した上で、皆が幸せになる新たな法律を制定することが一番望ましいと言えそうだ。

編集=上田裕資

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